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2006年8月30日 (水)

¥1の意味

 高樹のぶ子の『蔦燃』という長篇を友人から勧められたので、Amazonで検索してみると、単行本・文庫ともにマーケットプレイスへの出品分しかない。値段を見るとどちらも、そしてどの出品者も「¥1」で出しているので、だったらかさばらない方を選ぼうと思って文庫本にした。

 今日、それが届いたので現物を見てみたところ、まあ表紙カバーは多少古びているものの、保存状態は良好で、特に気になる点もない。おそらく、他の出品者のものも似たり寄ったりなのだろう。

 それにしても、「¥1」だ。無料で譲ってもらったようなものだ。送料は別だから損にはなっていないとしても、本を梱包して発送の手配をする手間を考えたら、事実上は赤字になっているとしか僕には思えない。前から疑問なのだが、これのように、マーケットプレイスで「¥1」とか「¥10」といった極端に低い値段がつけられているものは、そもそも「商品」と呼べるのだろうか。

 つまり、利ざやがまったくない(ように見える)にもかかわらず、あえてその値段で出品する側の意図が計り知れないのだ。Amazonでは普通、単品での商いになるから、スケールメリットもない。それでもあえて「¥1」? わからない。なにか、あの世界独特のルールやカラクリでもあるのだろうか。門外漢なので想像もつかないのだが。

 あ、倉庫料など、売れ筋ではない在庫を長期間抱えていることから生じる冗漫な維持費の削減に向けた努力ってこと? とにかく、なくなってくれれば助かる。しかし捨てたら丸損だし、場合によってはかえってコストがかかるので、ひとつひとつ、極限まで安くしてマーケットプレイスに放り込んでおく。チリも積もれば山となる。つまり、長期的には、「山」単位で倉庫の空きが発生するわけだ。なるほど、そういうことなら、まあ、なんとなくわかる。

 ちなみに自宅の近所の古本屋さんは、「一律100円コーナー」と称して、路地に面した外壁一面に本を並べている。店内の従業員からは絶対に見えない位置だし、だれかがこっそりそこから数冊の本を黙って抜き取っていったとしても、おそらく誰も気づかないだろう。客が正直にレジまで持ってくればもちろん「100円」の売上になるわけだが、盗まれたところでその損害は、「店舗のキャパが増える」というメリットと相殺される。そういう判断があって、あえてああいう陳列の仕方をしているのではないか、とふと思い至った。

 ただ、そのコーナー、そのように「どうぞ好きなだけご自由にお持ちください」と言わんばかりになげやりな感じで設置されているだけあって、たまに眺めても、食指が動くような本はほとんどない。だからなのかどうか、そこから黙って本を拝借している人もいなさそうな感じだ。世の中うまくできている、と言うべきなのか、うまくいかない、と言うべきなのか。

 それに比べると、ネットオークションは客の方が狙い撃ちしてくるから、効率がよい。そうか、だからか。それで欲しい人の手に安く本が渡るのだから、よくできた仕組みなのだ。

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コメント

ご無沙汰しております。
ところで壱円にてご購入頂いた『蔦燃』はどのような読後感でしょうか?
あの本を当時何人かに勧め、それきりその人とは縁が切れてしまったという個人的な曰く付ききだったのですよ。

投稿: NOGI | 2006年9月12日 (火) 21時44分

あー、すいません、実はまだ読んでないのです。読もうと思って買いためてる本は常時15冊前後あって、順番に読みつつ、そのさらに次に読む本を買い足している感じなので。『蔦燃』は次の次の次あたりかな。
「その人とは縁が切れて」って、勧めた「何人か」全員と、っていう意味? ではないですよね? なんか怖いなそれ。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年9月12日 (火) 22時22分

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