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2006年10月28日 (土)

特異な字

『シュガーな俺』販促用の手書きPOPを数十枚書く。書きながら、どうして自分はこんなに字がヘタなのだろうとつくづく思う。世界文化社担当U氏は、「ヘタウマ系でそれなりに味があっていいのでは?」と言ってくれるが、正直なところ、これはどっからどう見ても「ヘタ」以外のなにものでもない。

 僕の字がこんな風になってしまった原点がどこにあったかは、かなりはっきりと覚えている。中学2年のとき、同じクラスにいたSが、中学生のくせにえらく達筆な字を書く奴で、僕は彼の字に憧れていた。どうしたらああいう風に書けるのだろうと思って何度も模倣しているうちに、特異きわまりない字体が完成してしまったのだ。

 今から思うと、Sはたぶん習字などを習っていて、基礎がしっかりしていたのだろう。その上で、スタイリッシュに崩していたから、カッコよかったのだ。絵のヘタな人間がピカソの真似をしても子供の落書きにしかならないのと同じで、基礎もない状態でただサル真似したって、「達筆」になんてなれるはずがない。しかし、思春期から青春時代にかけてそういう字ばかり書いていたものだから、気がついたときにはもう、矯正不可能となっていた。

 大学を出て最初に就職した会社でのエピソードを思い出す。入社して、総務のある女性に紹介されたとき、「ああ、あなたが平山瑞穂さんね。セミナーへの参加希望ハガキにすっごく特異な字を書く人がいて、いったいどんな人なんだろうと思ったから、名前を覚えてたわ」と言われたのだ。まあ、逆にそこまで「特異」なら、作家としてはそう嘆く必要もないのかもしれないが。

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コメント

黒いシミ時代に少しだけお邪魔したことのある者です。お久し振りです。覚えていらっしゃるでしょうか?

私の働いてる書店には、今日「シュガーな俺」が入ってきました。
小さな書店なので、「ラスマン」と「ワスチカ」の入荷は各一冊ずつでしたが、「シュガー」は初回三冊でした!
有名な直木賞作家の本でも一冊入荷がしばしばという店なので、個人的には凄く嬉しいんですが……レベルの低い話で申し訳ないです。
早速購入しました。
二十冊近く積んでしまっているので、実際に読むのはもう少し先になりますが……。

「ラスマン」みたいな、純文学チックな作品もまた読みたいです。
「冥王星パーティー」も期待してます。

投稿: mizu | 2006年10月28日 (土) 23時28分

あ、mizuさん、覚えておりますよ。お名前がちょっと自分に似ていた(?)ので、なんとなく印象に残っておりました。〈なにげに〉を論じている頃などにコメント頂きましたよね?(あの頃のあの情熱はいったい何だったんだろうか、と自分でも不思議に……)
mizuさんは、書店員さんでいらしたのですね。そして、さっそく買っていただけたのですね、ありがとうございます! それにしても、直木賞作家を差し置いて3冊とは異な……。かくなる上はどんどん売っていただければと!

「冥王星」は、どちらかと言うとエンタメだと思います。その次に小学館で出す予定の書き下ろしが、一応、「ラスマン」にちょっと引き戻した感じになるかと。ただ、「ラスマン」並みにベタな純文学系のものを書くのは、もうちょっと体力をつけてからかなー(笑)。いや、いつか必ず書きますけど、まずは生き残りを画策しなければ。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年10月29日 (日) 00時02分

ぜひ、生き残ってください!
いま、首都圏の激戦区の書店ってどういうものかしらと「エキサイトブックス」から「首都圏 書店ガイド」をあちこちたどっていたら、なんと!ジュンク堂池袋本店で「在庫なし」となっていました。これから糖尿病週間とのことですし、もっともっと売れそうですね♪あと、本やタウンの「よみもの」カテゴリでもおすすめピックアップに掲載されてましたね。発行が11月になっているせいかのか、注文できないというところが残念ですが。

ところで、普段SFを読まないこともあり、またSFマガジンに掲載されるような作品を読みたいなぁ、あるいは作品を追加して単行本にならないかしら?と思っておりますが、それもそのうち……と期待してよろしいでしょうか(^_^)

投稿: ダレカ | 2006年10月29日 (日) 03時52分

激励ありがとうこざいます。作家供給過剰(2ちゃん風に言うと「作家大杉」)と思われる中、必ずやサバイバルしてみせますので!
あー、ただ、ジュンク堂の「在庫なし」はたぶん表示ミスかと。サイン本を25冊書く前から(書いた後も)1週間近くあの表示のままなのですよ……。でもこれから糖尿病週間ですからね。
「SFマガジン」系の短編・中編なども、書いていきたいとは思っているのですが、そのための時間的隙間を見つけるのがなかなか困難です。でも、発表済み2編をそのまま埋もれさせたくはないので、なんとかしたいところですね。

それと、ブログに感想アップしてくださってありがとうございました。「黒通信」時代のトイレのエントリにつなげるところなど、さすがと思いました。まったくそのとおりです。そういう理由で「個室」利用頻度が高かったという。あ、「ございす」は意図的です。亜梨沙口調の一部ということで。紛らわしくてごめんなさい。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年10月29日 (日) 10時50分

お返事ありがとうございます。

>「ございす」は意図的
了解いたしました。

投稿: ダレカ | 2006年10月29日 (日) 15時24分

私も字にコンプレックスがあります。私の小学校時代は”丸文字”全盛期で、汚い字をごまかすために丸文字をまねていたら・・・私特有の字に仕上がりました。

実は、4年ほど前にCMに出たことがあり、たまに行く店に、色紙にサインを頼まれたことがありました。もう小学生レベルの字で「すみません、本当に字が汚いんです」といって赤面しながら渡したのですが、先方が一瞬沈黙されたのを見逃しませんでした・・。あきれていたと思われます。今でもそのお店に飾ってあることを考えると、内蔵が萎縮する思いです。

就職する会社で話題になるほどの字って、ある意味すごいですよね。いつか、どこかで見られるかしら?!

投稿: | 2006年10月29日 (日) 16時02分

書店員とは言い条、バイトの身分でしかありませんので、大したお力添えはできないかと……すみません。
とは言え、小ずるいことに、私名義の発刊が成った際には、コーナー特設を店長にちゃっかり口約して頂きました。役得。

ああでも、やっぱり作家供給過剰なんですね……。平山瑞穂さんに限っては、問題にならないことのように見受けられます。多分、欲目ではなく。

投稿: mizu | 2006年10月29日 (日) 16時20分

> ダレカさん
さっき、長くなり過ぎると思って端折ってしまったのですが、亜梨沙の「ございす」、もともとは単なる脱字だったのです。しかしそれを「意図的」だと解した担当編集U氏が「これは秀逸!」と妙にウケているので、いっそ語り口の一部にしてしまおうと(笑)。まあそんなこともあります。

> 香さん
えっ、えっ? CMって、なななんのCMですか? とか、訊いちゃいけないんでしょうか。まあどっちみち、あまりテレビを観ない人間なもので、言われてもわからない可能性もありますが……。
しかし、そうですよね、香さんの世代なら丸文字(山根一眞言うところの「変体少女文字」)全盛期ですよね。当時、多くの女子は、丸文字と普通文字をTPOに応じて使い分けていたらしく見受けられ、器用だなーと関心していたものですが、香さんはたぶん、1バージョンしかお持ちでなかったのでしょうね(笑)。
僕の変態……じゃなくて「変体」文字は、いつかサインをさせていただく機会に恵まれたときにでもお目にかけられるでしょう。

> mizuさん
もしかして、作家志望でいらっしゃるのでしょうか? いや、もし本が出せた暁には、個人的なツテは使えるだけ使いまくった方がいいですよ! 今から出版社の人などに知り合いを増やしておくのも手かも。

作家大杉ではありますが、それでも文芸書を買っている人がそれなりにたくさんいることが励みになりますよね。言われているほどには「活字離れ」なんて起きていないのではないかと。
僕の作家生命、大丈夫でしょうかね……。そう言っていただけるととても安心なのですが、日々これ闘いですよ。デビューするよりサバイバルする方がたいへんな気が……。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年10月29日 (日) 16時55分

文字と言うのは実に面白いです。昔流行った丸文字とか、斜めになっている文字とか。高校生の頃、一画一画を定規で書いている人がいました。大変だなあと思いつつ見るとそんなにうまくないんですよね。卒業後は普通に戻したらしいですけど。この歳になるとある程度文字を見られるようになりますので、僕もうまく書きたいのですが左利きのせいもあってかなかなか書けません。うまい人は子供の頃から習字を習っていたりして、今となっては財産でしょうね。そういう人は羨ましい限りです。ペン習字でも習おうかな。

「作家大杉」とは笑いました。僕も2CHはたまに見ていますが
平山さんが書くとまた違った面白さがあります。でも負けないで下さいね。僕が唯一応援している作家さんなので。

投稿: ゾーン | 2006年10月29日 (日) 22時37分

「唯一応援している作家」とはなんと光栄な。というか、ある意味責任重大ですよね、フェードアウトしてしまわないよう、気張っていきます!
「字を書く」という行為は、これだけパソコンが普及してしまった今、機会がますます減っているので、僕の字はますますヘタになっていくようです。書くこと自体が途方もなくめんどくさくなってしまうのですよね。会社で残業中、すでに帰宅後の上司宛ての電話を取って、書き置きを残すときなど、自分でさえ判読できないほど汚い字で書いてしまい、「いくらなんでもこりゃないよな」と時間をかけて書き直す羽目になることも……。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年10月30日 (月) 00時03分

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