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2006年10月18日 (水)

歳の効用

 結婚記念日なので、東京ドームホテルの中のレストランで妻とささやかな食事をする。糖尿病患者であることを考慮に入れてもなお「ささやかな」と呼べるかどうかはともかくとして、社会通念上のレトリックとしてあえて表現するなら「ささやかな」食事だ。結婚して、もう、満9年になる。歳月の過ぎるのがいかに早いか、そして、結婚した時点の自分や妻がいかに若かったかを思い知る。

 ところで、今日はバイキング形式だったのだが、お子様連れの客も多く、そういう場での子供のふるまいを観察していると、子供というものがいかに「見えていないか」がよくわかる。この料理が欲しいと思ってトングに手を伸ばしていると、平気でそこに割り込んでくる。「割り込んでいる」という自覚はまったくないようだし、そもそも、僕という大人が自分より先にその料理の前に立っていて、今まさにトングに手を伸ばしているところだという状況把握が、まったくできていないように見える。

 もちろん、子供のやることだから、別に腹を立てるわけでもない。ただ、「ああ、見えていないんだな」と思うだけだ。視点の高さも違うし、僕の手の動きなどは彼の視界の中では周辺で起こっていること(したがって、無視していいレベルのこと)に過ぎないのだろう。自分も子供の頃はこうだったのだろうな、と思う。自覚もないまま、たぶん多くの大人の既得権益を剥奪したり、利益を逸失させたりしていたのだろうな、と。そしてその都度、「まあ、子供のやることだから」と大目に見られたりしていたのだろうな、と。

 歳を重ねることから引き出される利点のひとつは、いろいろな立場を理解できるようになることだ、と思っている。たとえば、子供の頃、あてにならないとか理不尽なことを言うとかいう理由で軽んじたり蔑んだり憎んだりしていた先生が、今思えばたかだか25、6歳の若造か小娘に過ぎなかったのだ、と気づく瞬間。そりゃあムリもないだろう、自分がその年齢のときのことを思えば、あのときのあの先生よりもっと子供っぽいふるまいをしたかもしれない。今の僕にはそう思えるのだ。

 それでもなお、許せないと思う大人がいる。38歳になった僕の尺度から見ても、やっぱり許せないと思う、遠い日の記憶の中の大人が。そういう人のことは、きっと許す必要もないのだろうと思う。

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コメント

一緒にエレベーターに乗ったのに、点灯している行き先階ボタンを見て
「どうして*階も押してあるんだろう?」
と不思議がって騒いでいる小学生がいたので、私が降りますと言ったら、声に驚いて振り向き、ぎょっとしていた。子どもは周りが見えていないんだなと思ったばかりだったので、本日のエントリに共時性を感じてしまった。

別の時間、別の場所で生まれた二人が一緒に暮らすのも何かの縁。いつまでも仲良く暮らして下さい。

投稿: 黄海 | 2006年10月19日 (木) 07時42分

ああ、それはきっとなにか、シンクロニシティが働いていたのでしょう。それにしても子供って、頭に浮かんだ疑問を浮かんだ順にストレートに口にしますよね。

結婚も、したてのころはどこか見切り発車的な思いをおたがいに抱いていたと思うのですが、いつしか安定しておりました。今後も仲良くやっていきたいものです。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年10月19日 (木) 20時57分

たぶん、『シュガーな俺』がもうすぐ発売だなーと考えていたからだと思う。<シンクロ

投稿: 黄海 | 2006年10月20日 (金) 07時09分

平山さんのお誕生日と、結婚記念日ってとても覚えやすいですね。
お誕生日の9月6日は悠仁さまとご一緒だし、結婚記念日は郷ひろみさんのお誕生日と一緒なんですもの。別に私が郷さんのファンでは無いのですが、長姉が中学生頃、大ファンで新人賞か何かの賞を受賞した時、突然長姉が大泣きした事があって、未だに誕生日を覚えているんですね。
と言うよりも、私は勉強が出来なかったかわりに、記念日等の記憶力がかなりいいんです。
友人を含む誕生日、結婚記念日、命日など覚えていて、よく驚かれます。
一つぐらい、取り柄があるものですね。
それから、本日『シュガーな俺』発売おめでとうございます。朝刊に広告が載っているかと思ったのですが、載っていませんでしたね。夕刊には載るのかなぁ?

投稿: えぞりす | 2006年10月20日 (金) 14時36分

> 黄海さん
同じことを考えてくれていたほかの人々との間にも、実は似たようなシンクロが起きていたりして……。

> えぞりすさん
郷ひろみさんの方は存じませんでした……(笑)。でもそのエピソードで、関係ないですが、清水健太郎さんがデビューした当時大ファンで、レコード大賞の新人賞かなんかを獲ったとき感極まって泣いてしまったことを思い出しました。泣くほど好きだった記憶がないんですけどねぇ……。
それにしても、取り柄がそれ「一つ」なんてとんでもないのではないですか。こうしてコメント欄などでお話しているかぎり、とてもお優しい、心遣いのこまやかな方とお見受けし、いつも癒されてますよ。

あ、それと、広告の件ですが、ごめんなさい、重版がかからないと広告は出してもらえないそうです。今後の売れ行きにかかってますね。売れてくれるといいんですが……。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年10月21日 (土) 13時02分

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