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2006年10月 3日 (火)

無為、逃走

 頭の抜針(ばっしん)をした。いや、正確にはなんというのかいまだに知らない。その器具の名称も知らないし、器具自体、この目で見たわけではない。それどころか、今朝まで頭皮に食いついていた3本の金具も、ついに目で見る機会はなかった。ただ、ときどき痛がゆさを感じて指先でそっと触れると、そこにあからさまに金属的ななにかがあることだけはわかり、機械人間にでもなってしまったかのような気分になっただけだ。

 ともあれ、これで治療終了だ。「きれいな傷ですね」とのこと。醜い傷跡が残ることもあるまいが、スキンヘッドにする予定は今のところないので、あまり関係がない。

 一方、無為は、あいかわらずときどき吐いたりしているし、食欲もあまりない。しかし、3度も病院に連れていき、そのたびに処方される薬の種類もひとつずつ増えていくだけあって、吐気はだいぶおさまっているように見える。それより何より、これは初めからそうなのだが、胃液を吐いたりしているわりに、機嫌はすこぶるよさそうなのだ。飼い猫の機嫌がいいか悪いかは、ちょっと顔を見ればわかる。妻も同感しているので、僕の「希望的観測」ではないと思う。

 それでも、薬を飲ませるのはやはりいやがる。僕が無為の体を押さえている間に妻が口をこじあけて錠剤を喉の奥に放り込むという、もうすっかり習熟してしまった共同作業だが、それをされた後、無為はたいてい、特に妻に対して腹を立てている。ときには、わざわざ僕の背後に回り、つまり、僕を盾にして、妻のことを恨みがましい目で睨みつけたりする。「いやなこと」をするのは妻であって、僕がその妻の行動に関与していることには、どうも気づいていないらしいのだ。

 と思っていたら、今朝は違った。3種類の薬を飲ませるのはなかなか困難で、妻が手間取っている間に、体の自由をきかなくさせている僕の両手の存在に気づいたらしい。心ならずも錠剤を嚥下してしまった後、無為は妻にも僕にも背を向けてたたたたっと走り、押し入れの中に隠れてしまったのだ。「隠れる」と言ったって、たまたま開いていた襖の隙間から、ごちゃごちゃとものが詰め込んである物陰に半端に身を潜めただけで、「身を隠している」ことにはまったくなっていないのだが。

 マンションの中じゃ、ろくな逃げ場さえない。本当に不憫だ。そして、そんなに怒っていたくせに、僕が会社から帰ってくるなり「にゃーん!」と歓迎の声を発しながらドアまで駆け寄ってくるのが、また輪をかけて不憫でならないのである。

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コメント

無為ちゃん、心配。だけど、ちょっとでも食欲があるうちは、大丈夫!だと思う。
猫は人よりはやく年をとるから、体感時間も人間よりはやいのではないかと、思うのです。だから、平山さんがひどいことしたと無為ちゃんが思っても、平山さんが出かけて帰ってくるまでに、怒りが鎮静化して許してしまうのじゃないかしらん。朝、怒って、夜には、許す。猫は、いいなあ…。
なんて、身勝手な考えですかね。

投稿: 山田 | 2006年10月 4日 (水) 01時45分

なるほど、体感時間の早さか! そういう風には考えてみたこともありませんでした。いや、単に脳のキャパというかメモリ(まさにmemory!)が極端に小さいので、新しい記憶にどんどん押し出されていって「忘れてしまう」だけなのかと(笑)。忘れないと誓うべくもないというか。誓うに値するほど記憶が持続しないというか。忘れないと誓うに値しないと思ったぼくがいた(クドい)。
つまり、僕が会社に行って帰宅するまでの間に、「忘れる」というよりは記憶が「風化する」というか、「ほとぼりがさめて」しまうわけですね。僕は一度怒るとしつこいので何ヶ月も、ときには何年も(最長で20年以上)怒りつづけてたりするんですが、猫の場合、同じスパンで怒りつづけてたら、怒ってるうちに生涯が終わっちまいますからねぇ。

いや、心配ですけど、とりあえずときどきは食べてるみたいなので、なんとかなるでしょう!

ちなみに犬は、もっと長く怒りが持続するものなのでしょうか。だとしたらやっぱ脳のデキの違いなんじゃないかなぁ。あきらかに犬の方が賢いと思うので。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年10月 4日 (水) 01時55分

犬は…基本的に飼い主が大好きだから、少々のことでは根に持つようなことはないような…?飼い主以外がしたことは、生涯にわたって根にもっていたりもするみたいですけど。
我が家にいた犬は、腹が立ったら迷わず相手に制裁を加える犬だったので、その場で飼い主の手に穴を開けて、あとはすっきりなさってました。私、飼い主というより、出来の悪い使用人くらいのものでしたし。
犬も猫も同じじゃないですかね。飼い主が帰ってくると、私らがペットに対面してうれしいように、うれしいんですよ。きっと。

投稿: 山田 | 2006年10月 4日 (水) 20時56分

「できの悪い使用人」ですか……。犬は自分が飼われることになった家庭内での家族の序列を見て自分を位置づけるらしいですからねー。しかもなぜか、自分を「最下位」に位置づけることはないという。
でもその、「飼い主が帰ってくると嬉しい」というシンプルな気持ち、見習いたいものですね。何年ごしで怒っている相手とも、ほんとは仲直りしたいなーとか思いつつ、素直になれなくて(It's hard for me to say I'm Sorry ----Chicago)それができないのが人間という……。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年10月 5日 (木) 00時32分

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