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2006年11月 5日 (日)

カーペットに雫

 日中、パソコンに向かっていたら、「ぽたし、ぽたし」という、カーペットに雫が垂れるような音が近づいてくる。何かと思って見たら、ずっとクローゼットに引きこもっていた無為が、自らの意志で出てきて、僕に近寄ろうとしているところだった。ここ数日ではかなり珍しいことだ。いやがっているのを毎日のように連れ出されては、病院で点滴を打たれ、僕や妻に対してもすっかり不信感を抱いてしまっているからだ。

 無為が今、どういう状況なのか、つらすぎてここには書けない。今、一度書きかけたが、消してしまった。あと何日もつのかもわからない。打てる手はすべて打ったと思う。あとは、少しでも苦しまずに旅立てるよう、静かに看取ってやるだけだ。

 さっき、妻と二人で、点滴を打った。病院でやり方を習って、必要な器具や薬液ももらってきたのだ。病院に連れていくこと自体が(待ち時間なども含めて)ひどいストレスになっているようなので、それを少しでもやわらげられるなら、と考えてのことだ。

 病院では、針を刺す瞬間に唸り声を上げる程度であとは黙ってじっとしているのに、僕たちがやると、途中で何度も「やーん」と鳴いて身を激しくよじる。針の刺し方が下手というのもあるかもしれないが、たぶん、病院でなにかされるときほどの恐怖がないためだろう。つまり、抵抗するだけの心の余裕があるのだ。そう考えれば、やはり、自宅でやることにしたのは正解だったのだと思う。

 今も無為は、クローゼットの奥に身を潜めてじっとしている。点滴されたことをまだ怒っているようだ。でもきっとそのうち心細くなって、日中そうしたように、自分から出てくるのだろう。出てきてほしいと思う。弱り切ったおぼつかない足取りで、「ぽたし、ぽたし」とカーペットを踏みながら。

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コメント

11月5日は僕の35歳の誕生日でして、妻がケーキを買ってきてくれました。残さず食べました。久しぶりの甘い物で感動してしまいました。

無為ちゃんは何日持つかわからないとは相当重症なのですね。平山さん夫妻の気持ちは家族を失うかもしれない気持ちと同じですね。
僕は一昨年、今年と相次いで両親を亡くしましたのでその気持ちは分かる気がします。風樹の嘆と言うことわざがありますが僕はまさにそれでした。無為ちゃんのために平山さん夫妻は悔いのない様にしてあげてくださいね。

投稿: ゾーン | 2006年11月 6日 (月) 11時50分

ご自分のお子さんの様に大切に、大切にしている無為ちゃんの辛い姿を見るのは心が痛いですね。丁度、入院している母と重なってしまい、平山さんのお気持ちも多少なりとも分かりますので読んでいて切なかったです。
でも、無為ちゃんは幸せですね。こんなに大切にされ、愛されているのですから。逆に平山さんも無為ちゃんによって、心穏やかになれたり、癒されているのでしょうね。誰にも頼らずに生きていける、なんて思っている人もこの世の中には居るのでしょうが、そういう人でも、犬や猫またはお花に慰められる事もあるでしょうね。
ここで、数日前にあったちょっぴり幸せなお話のお裾分け?をしたいと思います。
義母と電話で話していたら、酔っ払った義父が何かを叫んでいるんです。何を言っているのだろう?と思い、よ~く耳を澄ますと「○○(←私の名前)頑張れよぉ~!頑張れよぉ~!負けるんじゃないぞぉ~!」って。
私の母の病気の事で私を案じて、精神的・体力的に負けるなと応援をしてくれたみたいで物凄くジィ~ンとしてしまいました。
普段は口数も少なく、目も合わせられない義父の言葉だけに嬉しかったです。
私は結婚が決まった時に、主人に「私は○○家の嫁ではなく、娘になりたい」と言ったのですが、その瞬間、私は義父にとって息子の嫁ではなく、娘になれたのだなぁって思ったのです。
“幸せのお裾分け”になったでしょうか?

投稿: えぞりす | 2006年11月 6日 (月) 15時45分

私の実家の猫は、普段から母にとても懐いておりましたが、やはり病気が進行するにつれて余計に甘えん坊になったそうです。片時も離れたくない、というように・・・。
その気持ちを考えると、胸が苦しいですね。

せめて、点滴は無為ちゃんのためにやっているのだということをわかってもらえたらいいのに・・。ううん、絶対にわかってくれてますね。大事にされていることを。

投稿: | 2006年11月 6日 (月) 21時23分

> ゾーンさん
おお、お誕生日だったのですか、おめでとうございます! 奥さんの買ってきてくれたケーキのお話は、「シュガー」の中の焼きバナナのエピソードにも通じる心暖まるお話ですね。そうです、「誕生日のケーキは、食べちゃってもいい」のです!(『シュガーな俺』参照・笑)

ご両親、ずいぶん若くして亡くされたのですね、ご愁傷様です。本当の肉親に比べれば、ペットを失う悲しみなどものの数ではないかもしれませんが、それでもやはり、かなりメゲてます。ただ、悔いだけは残らないだろうと思っています。「一生に何度会っても会い足りない」(オノ・ヨーコ)けれど、今まで、これ以上はないほど可愛がってきたという自覚はあるので……。

> えぞりすさん
そうですね、僕たち夫婦も無為をうんとうんとかわいがってきたけれど、それ以上に、僕たちが無為にいつもいつも癒されてきたと思っています。こんな小さな生き物が家の中に1匹いるだけで、こんなに楽しい、心安らぐ時間を、こんなに長い間過ごせたんだなぁ、と今になってしみじみ思うのです。家の中でただひとり、なんの仕事もせず無為に過ごしているから「無為」、というニックネームをつけていたわけですが(本名は「うい」です)、本当は違います。僕たちを癒し、楽しませてくれるというとても大きな仕事を、無為はしつづけてきたのです。だから、それに見合うだけの愛情で、無為を送り出してあげたいと思うのです。
お義父さんのお話、心に沁みますね。きっと、昔気質で、好意を示したりすることが不器用な人で、でもだからこそ、酔っぱらって本当の気持ちが出たのでしょうね。ありがとうございます。「お裾分け」、十分にいただきました。

> 香さん
無為も、本当に具合が悪いときは、撫でてもそっぽを向いてるだけなんですが、少しでも余裕があるときは、ちょっと頭を撫でただけでゴロゴロ喉を鳴らしはじめ、どれだけ撫でても満足せず、いつまでもゴロゴロ言っているのです。もともと自立心の強い猫で、過度にかまうとすぐイライラしはじめて、それがまるで「うぜぇ」とでも言っているようで、飼い主的には物足りなくさえある猫だったのに、今はもう弱り果てていて、自分から甘えに来る元気はなくても、本当は今までになく甘えたい、心細い気持ちなんだろうな、というのが痛いほど伝わってくるのです。だから、会社に行っている時間がもうせつなくて……。

点滴をすれば、現実問題として機嫌を損ねはするけれど、「大事にしている」ということは、伝わっていると信じたいです。きっと、伝わっていると思います。

皆様、ありがとうございました。少しずつ、心の準備をしております。結局、とうていしきれないのだろうけど……。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年11月 6日 (月) 22時09分

御無沙汰ばかりのクマキチです。
無為チャンの最期をちゃんと看取ってあげられるといいですね。
僕は、先月実家の親父が急死しまして(享年80歳)、葬儀のドタバタや、取り残された母親(認知症)と老犬リーベ(13歳)のその後の世話のことやらで、仙台との間を行ったり来たりしてまして、ネットどころじゃない状態でした。
おかげで、シュガーもまだ手に入れてませんです。というか、おとといの土曜日に新幹線の中で読もうかなと思ってちょいと大きめの本屋を覗いたんですが、ありませんでした。
どっとみち、もうチョット落ち着いてからゆっくり読ませていただきます。(オンラインで1/3ほど読んでますが・・・)
無為チャンが安らかに永久の眠りにつかれんことを・・・

投稿: クマキチ | 2006年11月 6日 (月) 22時57分

おお、クマキチさん、たいへんお久しぶりです。ご尊父逝去の件、少し前にブログをちらっと拝見して存じてはおりました。ご愁傷様でした。そして、いろいろとご心労がおありのことと拝察いたします。
もちろん、「シュガー」は、ご身辺がもう少し落ち着いてからでまったくかまいませんので、そのうちお読みいただければ、と思います。
パピヨンのメルくんはお元気でしょうか。無為はもう風前の灯という感じですが、とにかく、少しでも安らかに逝ってくれれば、と思っております。暖かいお言葉、ありがとうございました。おたがい、落ち着くまでにはもうしばらく時間がかかりそうですね……。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年11月 6日 (月) 23時34分

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