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2006年11月28日 (火)

酉の市

 新宿・花園神社の酉の市に行く。いちばんの目当ては、今や日本で唯一の生き残りと言われる「見世物小屋」だ。双頭の牛のミイラ、脱皮間近の巨大なニシキヘビ、熱して液状になった蝋を口の中に流し込み、一気に吐き出して火を噴く芸などいろいろ見せられたが、最も印象に残っているのは、「ニューフェイス」の小雪大夫。椎名林檎に激似の普通に可愛いこの人が、鼻の穴から鎖を入れて口から出し、あまつさえその両端を、水を張ったバケツにつないで持ち上げたり、頭をもいだ蛇を生のままかじって食べたりする。たいへん堪能した。

 感心したのは、客を巧みに出口へと誘導していくそのシステムだ。「この芸はこっちの方に来ないとよく見えません」と言いながら、段階的に客を(入口とは反対の)右側へと詰めさせてゆく。最後には、舞台の右の方でワンちゃんのショーをやり、ドギツい芸の後味をきれいに拭い去ったあたりで、「お次は鼻から口へ鎖を通す実験です」と言って、演目が一巡したことを観客に示す。その頃には、観客たちは出口に近い右奥あたりに位置しているという寸法だ。料金は昔ながらの後払い、つまり「お代は観てのお帰り」なので、そこで成人は800円を支払って小屋を出て行く。

 通しで30〜40分くらいだっただろうか。しかし、見たところショーはエンドレスで続けられている(どの時点で小屋に入っても必ず一巡できる仕組み)ようなので、演者たちはいったいいつ休憩を取っているのか、その点が気にかかる。小雪大夫はその間、生臭い蛇の後味をずっと口中に留めたままなのだろうか。

 見世物小屋とは言いつつ、人権団体から突き上げを食らうような題材・演目は周到に避けられている。このスタイルが定まるまでにいろんな葛藤や障壁、生き残りのためのさまざまな妥協や工夫の数々があったのだろうなと想像される。しかし、MCを張るベテランっぽい女性の口上の圧倒的なウマさと、「ニューフェイス」小雪大夫の圧倒的な可愛さで、すべてが許されている感がある。おもしろかった。

 昔、母親がよく、「酉の市に行ってきた」と言っていたのを思い出す。酉の市に行って、その帰りに仲間としこたま飲んできていたのだ。それは母親が酒飲みとして絶頂の頃で、今思えば、現在の僕と同じくらいの年ごろのことだった。当時はただ話に聞いているだけで、とりたてて興味を抱かされるわけでもなかったが、今になって、「ああ、こういう感じだったのだな」と感慨深く思う。しかしまた同時に思うのは、それは専業主婦としてはいかがなものだったのか、ということだ。酒好きの豪快な母。豪快なようで小心者の母。それとそっくりな息子の僕。

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コメント

見世物小屋って、今のご時勢でもあるんですね。びっくり!
うーん、新宿なら行動範囲内だけど、見たらたぶん数日間は胸が悪くなりそうです。

自分が覚えている親が、今の自分と同じ年のことを考えると面白いやらそら、恐ろしいやら。この年で母は立派に母親をやっていたのに、私は好き放題やっていて、申し訳なく思ったりします。
似ている部分を見つけるといい意味でも悪い意味でも「血は争えない・・」と思いますね。中学時代に演劇部に入った時、父が半ば嬉しそうに自分も演劇をやっていた過去を告ってました・・・。おそろしや。

投稿: | 2006年11月29日 (水) 22時48分

見世物小屋、おもしろかったですよ、純粋に! いや、ぜひ一度はご覧になってください。来年もまた小屋が開かれるという保証はありませんが……。

親の頃とは当然、世相がだいぶ変わってきてしまっているわけですが、それって「この年齢のときには〜だった」という部分に最も劇的に現れますよね。ただ、僕の母親がスゴいなと思うのは、それにもかかわらず(つまり、今の僕の年齢ですでに中学生くらいの娘・息子がいた専業主婦だったにもかかわらず)、酒の飲み方は僕と同じだった、という点なのです。まあ、まさに「血は争えない」というやつですね。しかしそのお父さんのエピソードは、心暖まるじゃないですか!

投稿: 平山瑞穂 | 2006年11月30日 (木) 00時02分

まさにお母様の遺伝子ですね(^^)。お母様は家で飲まれてたということですか?それとも、子供を置いて外に飲みに行ってたのでしょうか。

うちでは母がアルコールに強く、父が一緒だろうと一人だろうとビールで晩酌しています。ただ、大酒飲みではないですね(笑)。父はアルコールに弱い体質なのに商社の営業という仕事柄、毎日飲んで鍛えられたのか、かなり飲めます。
私は父の遺伝子を受け継ぎ、飲むとすぐ真っ赤になるのですが・・・飲み会が続くとなんとなくたくさん飲めるようになるから不思議です。

演劇部の話、中学時代は嫌でしたよー!思春期の娘の父親への反発心ですがね。

余談ですが、私のコメント「空恐ろしい」とかいたつもりだったのに、「そら、恐ろしい」とわけのわからない部分に句読点をつけてしまってました(汗)

投稿: | 2006年11月30日 (木) 10時14分

 ごぶさたしております。高校のクラスで一緒だったものです。先日、「シュガー」を池袋のジュンク堂で購入しました。サイン入りなのかとひそかに期待したのですが、サインなしの普通のものでした。ただ、仕事が忙しく、なかなか読む時間がとれず、(ニフティの連載も当初は読んでいたのですが、その後はご無沙汰になっておりました)まだ読んでいなかったのですが、週刊現代の書評欄を読んで、病状がかなりシビアなものだったということが分かり、驚きました。
 本を読んでいれば、聞くまでもないことなのかもしれませんが、病気の原因は、アルコールのとりすぎにあるのでしょうか。
 糖尿病というと、注射を毎日、打たなければならず、大変だなという位の認識しかなかったのですが、二種類あるとは、参考になりました。そういえば、私の祖母も昔、糖尿病を患っており、毎日、注射器を腕にあてていたのを思い出しました。一方で、私の母も糖尿病を患っておりますが、注射はしておりません。
 糖尿病は、体質が遺伝しやすいとも聞きましたので、私も注意しなければならないのかもしれません。
 話は変わりますが、見世物小屋は、私も以前から見たいと思っていたのですが、なかなか行く機会がありません。12月の秩父の夜祭にも、見世物小屋が出るというのを以前、何かで読んだことがあります。しかし、秩父は遠いので、ちょっと躊躇していたのですが、新宿で見られるとは知りませんでした。
 見世物小屋については、私が以前呼んだ本「見世物小屋の文化誌 」新宿書房(鵜飼正樹編著、北村 皆雄編著、上島 敏昭編著)がとても参考になります。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4880082589/sr=8-5/qid=1164849976/ref=sr_1_5/250-7530995-0834646?ie=UTF8&s=books
機会があれば、ご参考にどうぞ。
それでは、また。

投稿: 名乗るほどの者ではありません | 2006年11月30日 (木) 10時40分

> 香さん
「そら、恐ろしい」には気づいておりまして、ココログではコメントも編集できるのでそっと直しておこうかなと一瞬思いましたが、よけいなお世話だろうと思いとどまりました。というか、逆におもしろくていいかなと(笑)。
ちなみに母は、家でも寝酒のウイスキーなどはよく飲んでいましたが、現在の僕と「飲み方が同じ」というのはむしろ、外で飲んでくる場合のことを指しています。母の名誉のためにひとこと添えておくと、もちろん、家事も人並み以上にこなし、僕ら姉弟の面倒もちゃんと見てくれてはいたんですが、外で飲むときはもう、午前3時帰宅とかあたりまえでしたね。
香さんは、飲むとすぐ「赤くなる」だけで、お酒に弱いというわけではもともとないのではないでしょうか?

> 名乗るほどの者では(以下略)さん
お久しぶりです。今もってどなたなのかわからないままなのですが(笑)、いつもブログを見てくださってありがとうございます。
ジュンク池袋の「シュガー」ですが、サイン本でなくてすみませんでした。サインを書くとけっこう数日のうちに捌けてしまうことが多いので……。僕の発病の原因その他については、ひとことでは言えません。そのへんについてはほぼ事実をそのまま「シュガー」に書いてありますので、読んでいただいた方が早いかと思います。お仕事の合間にぜひ!
お祖母様の「型」がどちらだったのか、「注射を打っていた」というだけでは判断がつきませんが、お母様は、注射を打っておられないということはおそらく「2型」で、それは遺伝的要因が大きいと言われておりますので、食生活に注意された方がいいかもしれませんね。って、医者みたいなことを言ってエラそうですが。
見世物小屋を花園神社の酉の市で観られることを知ったのは、僕もつい最近でしたが、あれは一見の価値があると思います。機会があればぜひ。ご紹介いただいた本、おもしろそうでしたので、さっそくAmazonで注文いたしました。もっとも、すでに20数冊、読む予定の本が積まれておりますので、実際に読むのは当分先のことになりそうですが。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年11月30日 (木) 20時41分

『そら、恐ろしい』・・自分でも笑えます。寝る直前に書いたので寝ぼけていたのでしょうか、『面白いやらそら恐ろしいやら』と書いた後で「読みにくいから”、”を打とう」と思ったのを覚えてますが・・・まさかあんな部分に打っていたとは!?

お母様、すごい!!あの時代に二児の母で、丑三つ時に帰る人はそうそう居なかったでしょうね。今の時代でも居ないか・・・。
飲み始めると止まらないのですね。

私も飲み会は大好きです。朝まで飲み会なんて特に!でもお酒は弱いです。2、3時間飲んで、3杯から5杯がいいところです。亜梨沙さんみたいに飲めたら楽しいでしょうね。平山さんにお付き合いできないのが残念ですわ。(笑)

それから『週刊現代』買うの忘れたー!毎日、家に帰ってこのサイトに来ると思い出すのですよ。ああ、そうこうしているうちにきっとなくなっちゃいますね・・。

投稿: | 2006年11月30日 (木) 21時28分

> 香さん
「週刊現代」、今日のところはまだ店頭で見かけましたので、明日、もしまだあったらぜひに。

香さんからは「酒豪オーラ」をヒシヒシと感じていたのですが、若干カンが外れたようですね(笑)。僕的にもちょっと残念です(って、どういう意味で?)。

投稿: 平山瑞穂 | 2006年11月30日 (木) 23時26分

よく「すごく酒飲めそう!」といわれます。見掛けでそう判断されてますが、文章でもそう思われたか・・・。(笑)

投稿: | 2006年12月 1日 (金) 00時42分

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