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2007年2月 5日 (月)

本を持っている理由

 僕だけなのだろうか。昼食を摂ろうと1人で定食屋に入り、1人なのでカウンターに通され、そこで食べはじめたはいいものの、後から来て隣の席に着いた人が、自分の分がテーブルに届くのを待つ間、なにかを読むでもなく、ケータイを見るでもなく、ただじっと座っていると、落ち着いて食事を進めることができないのは。

 僕自身は、自分が同じ状況に置かれたらまず耐えられないので、必ずなにか読むものを持って店に入るようにしている。ないときはわざわざ直前に買ってまで用意することさえある。それは僕の問題だが、結果としてそういう状況のとき必ずなにかを読んでいる僕は、仮に僕の隣の人が僕のような性格で、なおかつ僕の分が届くよりも先に食べはじめていたとしても、その人に対しては無用なプレッシャーを与えずに済んでいることになる。

 しかし、みんながみんな僕のようであるわけではないのだ。自分が待っている間、ほかになにもすることがなくても気にならない人は、きっと隣の人が何もしていなくても気にならないのだ。それでも人はどうしても、自分を基準にしてものごとを判断してしまう。

 だから僕が、後から来た人の立場になったとき、読むものなどが何もないと耐えられないのには、2つの理由がある。1つは、ただ単に手持ちぶさたで、ただ座って待っている時間がもったいないと思うから。もうひとつは、僕がそこでそうしてただ黙って何もせずに座っていると、隣ですでに食べはじめている人が、「こいつ、することないからって人が食ってるとこ見てやがんじゃねーのか?」などと気にしているのではないかと思って、それが気になってしまうからだ。「そんなことはしてませんよ」ということを暗黙のうちに示すためにも(実際に僕は、その人がよっぽど汚らしい食い方でもしていないかぎり、そんなことをしたことは一度もないのだが)、僕はなにかを読んでいたいのだ。

 ところで急に思い出したのだが、一昨年、『ラス・マンチャス通信』を翻訳中のキム・ドンヒさんを訪ねて1人で韓国に行ったとき、大韓航空機の中で、僕がそれまで読んでいた雑誌に飽きてふとページを閉じたら、隣に座っていた見知らぬ人(たぶん、韓国から商用で日本に来て帰国する途中の、日本語が達者な韓国人)がにわかにソワソワしはじめて、いったいどうしたのかと思っていたら、「読みますか?」と言って、自分が読み終わった雑誌を貸してくれようとしたことがあった。僕が、読むものがなくなって手持ちぶさたになったものと思ったらしい。それが、韓国人的親切だったのか、それともその人固有の性質だったのか、僕にはいまだにわからない。

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コメント

先日のコメント欄での「ネコ型」の話のことなのですが、わたしは「イヌ型」というか、そういう従順な女性を好む方に誤解の上で好かれやすいようです。

単に相手が取引先や上司やお客様ということで話し相手を務めているだけなのに、初対面だったりするのに、どうしてそれだけで「自分に気がある」と誤解してしまうんでしょうね? こういう、「自分に気があるんだろう」という誤解を前提に近づいてくる男性が非常に苦手です。でも、こういう相手を無視するとわたしの方がひどいといわれたり、「あいつはいいやつだ」とかばう男性が現れたりするのが困り物です。挨拶やあいづちをかえすだけでも誤解する男性もいるので、むしろ傷口が広がる前に目を覚まさせるのが親切だと思うのに……。嗚呼、「ネコ型」になりたい。

投稿: ダレカ | 2007年2月 6日 (火) 02時47分

え~!きっと気にしすぎですよ(笑)。もしテーブル席の相席で、真正面に知らない人がいるときは多少気にしたりしますが・・・。
私は、一人でランチの時は近くのファミレスでカウンターに座ります。通常は本を読んでるので周りを気にしないですが、もし本を読んでなかったとしても隣の人が手持ち無沙汰で食べ物を待っていることは気にしませんよ。その逆も然り。”ひとりごはん”って、みんな自分の世界(本なり携帯なり空想なり考え事なり・・・)に浸ってるんじゃないでしょうか。

ところで、その韓国人は日本語の勉強のために話すきっかけが欲しかったのかも知れませんよ。それともただの親切な人だったのでしょうか・・・。
私は飛行機の中で、隣の外人とつたない英語で会話するのをたまに楽しんだりしてます。先日のアメリカからの帰りは、隣は若いアメリカ人男性だったので、結構そわそわしてしまいました(別の意味で?!)

投稿: | 2007年2月 7日 (水) 00時02分

> ダレカさん
男性は(年齢にかかわらず)一般的に女性より異性に幻想を抱きやすいですし、変なところで効率を考えたりするので、そういうことが起きてしまうのでしょうね。それでも相手が上司や取引先ではそうムゲにもできないでしょうから、まあ、実害をこうむらないレベルでやんわりとやりすごすしかないのでしょうねぇ……。でも「ネコ型」になったらなったで、別のタイプの男性が、「あの女は俺に気をもたせようとしている」と解釈して過剰に接近してくるかもしれませんよ。ものごと、よしあしってことですよ。

> 香さん
あー、はい、たぶん気にしすぎなんだろうと思います。僕が気にすることの大半はたぶん「気にしすぎ」なんです。それでも気にせずにはいられないのはもう性格としかいいようがないのでしょう。しかしそういうのって、距離という変数も大きく関わってくると思いませんか? ファミレスだったらカウンターと言えども比較的パーソナルスペースが広く確保できるじゃないですか。

ちなみに僕は、酔っぱらっていると異様にフレンドリーになって、外国人と見るやヘタな英語でフランクに話しかけたりします。飛行機の中じゃ無理ですね。典型的な「シャイな日本人」状態で(笑)。


投稿: 平山瑞穂 | 2007年2月 7日 (水) 01時09分

私はウンチをする際に必ず本を読む習慣があるので、結果的に滞在時時間が長くなり、出なくなるまで出来るだけウンコを出そうとして痔になりかけています。

投稿: ダーチャ | 2007年2月 7日 (水) 19時29分

パーソナルスペースは一生変わらないと聞いたことがあります。
他人と近い距離にいてもぜ~んぜん気にしない人っていますよね。平山さんはバリアに敏感なんですね。女は外では読書をしちゃダメです。本を読んでる女に男は絶対に声をかけないもの(笑)

投稿: りりこ | 2007年2月 7日 (水) 20時29分

> ダーチャさん
それはですね、ダーチャさん、言っていいですか? 迷惑ですよ! そういう人がいるからインスリン打ちづらくなるんですよ! 本、読まないでくださいよ! たとえ僕の本でもダメです。トイレの個室は可及的速やかに明け渡してくださいっ!

> りりこさん
僕は、たぶんそうなんでしょうね、厳しいんですよ、パーソナルスペースに。
でも、「本を読んでる女」には、少なくとも僕はそそられますよ、そうでない女よりも。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年2月 8日 (木) 01時12分

あー、確かにファミレスのカウンターのパーソナルスペースは大きいですね。ひじがぶつかる距離であれば、隣が気になるやも知れません・・・。
ところで、前にコメントで平山さんと私の共通点を見つけて楽しんでましたが、神経質なところとかは、すごく私の彼に似てるので面白いです。『シュガー』で、喬一さんがお皿をなかなか洗わない奥さんに痺れを切らして怒るという場面がありましたが、先日同じことが起こったのですよ。ははは。

話は変わりますが、私はランチや喫茶店で本を読みますが、世の中、照明が暗いところが多くありませんか?おそらく、長居してもらいたくないというお店の気持ちの表れなのかもしれませんが・・・目が疲れます。

投稿: | 2007年2月 8日 (木) 22時45分

お皿を洗うタイミングについてのあれはまさに実話なわけですが、ほかにも、妻が食卓の椅子を引いたまま立ち去ってしまうのが気になるとか、いろいろあるのですよ(笑)。ただ、そういうのって、人それぞれ「気になるポイント」が違うんですよね。妻がことさらにだらしないというわけではなく、僕は僕で、「なんで?」と妻に思われているところがあるんだろうと思います。しかし、僕が神経質なのは事実でしょうね。
僕にとって香さんは「既知のパターン」だと以前言いましたが、香さんにとっての僕もきっとそうなんでしょうね。おもしろいものです。

で、照明の暗さですか。そんなものはものともしません。仮に懐中電灯しかなくても僕は本を読みつづけるでしょう。1人で薄暗いバーに入って酒飲みながらでさえ読むことがありますよ。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年2月 8日 (木) 23時09分

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