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2007年2月19日 (月)

消えた方の冥王星

『冥王星パーティ』表紙のラフ案が上がってくる。毎回感心するが、新潮社装幀室は本当にセンスがいいので常に安心な感じだ。今回は、ちょっと寂しい感じの、しかし、不思議な感触を残す、絵のような写真がバックに敷かれている。無人の光景なのに、なぜか人の気配を感じさせる写真。かつてそこに人がいたという痕跡が、あるいは、その無人の光景を見ている視線の持ち主の存在が、どことはなしに暗示される写真。

 ところで、『冥王星パーティ』というタイトルが、昨秋の冥王星格下げ騒動より1年以上前からあったのだという話はこのブロクでも書いているが、本当のことを言うと、「冥王星」という語を自分の小説のタイトルに使おうと思い立ったのは、それよりもさらに15年も前のことなのだ。もちろん、デビューするよりはるか以前である。そのときは、端的に『冥王星』というタイトルにしようと思っていた。ブロットもおおむね考えてあったし、最初の方を書きはじめてさえいたのだが、今ひとつ気が乗らずに流産となってしまった。

 しかし、今回、タイトルだけはそれを引き継ぐ形で『冥王星パーティ』という本を出すに当たって、元祖『冥王星』の書きかけの原稿がどんなものであったのかちょっと興味を惹かれ、古いワープロ専用機とそのFDを引っ張り出してみたが、FDはすでにイカれていた。そんな事態になることを恐れて、ワープロ専用機時代のテキストデータを変換して現在のiBookに落とす作業を少しずつ進めていると以前にも書いたが、その後、作業は結局、遅々として進んでいない。そしてたまに古いFDを読み込もうとすると、それはたいてい壊れている。

 こうして、僕の古い作品は、着々とこの世界から消滅していくのだ。書き上げた作品であっても、FDがいつのまにか壊れていることなどしょっちゅうだし、書き上げているのだから一度はプリントアウトしているはずなのに、それがどうしても見つからない。ものというのはどうしてこう、散逸してしまうのだろうか。捨てた記憶がないものを、どうして見つけることができないのか。それとも僕は、自分の小説の主人公のように、捨ててはいけないはずのものについて、ときどき、「これはもう不要だ」という誤った判断をなぜかしてしまっているのだろうか。

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コメント

おはようございます。
今回のお話を読んで、大昔、文学少女だった頃聞いた話を、
思い出しました。 昔の文豪などを評論した解説文の中に、
処女作にはその作家の持てるものすべてが含まれていると
いうものです。先日、平山さんの作風が一冊毎に違っていると
いうような話が出ていた時、平山さんの処女作を読んでみたいと
ちらっと思っていたのでした。
将来の大作家になった時のために、これからの草稿は散逸させずに
大切に為さる事をお薦めします。日記(ブログ)も然りですね。(笑)

投稿: tae | 2007年2月20日 (火) 09時57分

すみません、「もっと!関西」楽しみにしてたのに、
見れませんでした(泣)
ビデオの録画セットしてたのに・・・電源切るのを、
忘れてました。
ショックで、具合悪くなって、昨日は凹んでました。
実況中継しようと思ってたのに・・・
申し訳ありませんでした。

投稿: epika | 2007年2月20日 (火) 17時18分

『冥王星パーティー』楽しみにしてます。私は『ラスマン』の表紙は割りと好きです。

昔書いたものが姿を消してしまうのはもったいないですね。FDは、磁気にやられてしまったということなのでしょうか・・・?電磁波が飛び交う家の中。どこに磁気が潜んでるかわかりません。

プリントアウトしたものは、いつか「おおー、こんなところに!」という具合に見つかるといいですね。それらが、日の目を見ることもあるのかしら?!?

それから、姪御さん”恐るべし”です。
将来彼女が大人になったときに話して、みんなで笑う日が来るのが楽しみですね。本当に”おさけをつぐひと”になっていたら、それもまたすごいですけど(笑)

投稿: | 2007年2月20日 (火) 17時35分

ああ、ショック……。みなさんのコメントにレスをつけて送信したつもりだったのに、送信が完了していなかったらしく……。書いたコメントを思い出しながら以下に復元します。

> taeさん
「処女作にすべてが含まれている」って、よく聞きますね。僕の場合、『ラス・マンチャス通信』はあくまで「デビュー作」に過ぎず、そこに至るまでの長い著作歴があるわけですが、そういう意味での「処女作」ってどれかな。なにかの賞に応募することを初めて想定して、事実応募した(そして落選した)アレかな。だとすると、一応、今でもプリントアウトしたものは残してあると思うけど、いやー、恥ずかしくてとてもお見せできませんねー。

> epikaさん
いえっ、そんな、具合が悪くなったり凹んだりするようなことでは……。もしご近所さんだったなら、後日送られてくるビデオかDVDをお貸しできるんですけど(笑)。まあ、それが届いてからせめて僕自身が様子をこのブログでお伝えしましょうかね。っつっても、自分では恥ずかしくてなかなかそういうのできないんですけどねー。

> 香さん
「ラスマン」の表紙はいいですよね。僕自身も気に入ってます。田中達之さんのアリモノのイラストだったんですけど、恐ろしいほど作品(特に第一章)のテイストや内容に合っていて。韓国版の出版も、もとをただせば向こうの版元の担当者がたまたま日本出張に来ていた際、書店で偶然あの表紙を見て惹かれたってところが発端だったそうなのですよ。
ちなみにFDは、長く使ってないとすぐイカれてしまいますよ。ちょくちょく使ってるともう少しもつみたいですけどね。人が住んでいない家はすぐ荒れる、というのと似ていますね。
それと、姪っ子はねー。ほんと、おもしろいんだけど、幼稚園児にしてそれってどうなのかというか。これからどうなっちゃうのかいささか不安でもあります。

おお、だいたいそのまま復元できた。さすが作家!(自画自賛)

投稿: 平山瑞穂 | 2007年2月21日 (水) 02時39分

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