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2007年3月13日 (火)

糾弾する人々

 ふと新聞の社会面を見たら、下4段分ほどが見開きですべて謝罪広告になっており、なにごとかと思った。ざっと見ると、例の、D日本印刷の業務委託先から流出した個人情報がらみだということがわかり、なるほどと思った。D日本印刷だけでなく、結果として名簿を流出されたクライアント企業も、直接の責任はないとは言え、謝らなければならないのだ。

 よく見ると、くだんの事件とは無関係な、食品への異物混入に関するお詫びもいくつか混ざっている。さらによく見ると、公正取引委員会から不当表示を指摘された某企業の謝罪広告もあり、その社名に思わず目をみはったが(「○○身長伸ばしセンター」って……)、この百花繚乱の謝罪広告祭りの中では埋もれてしまうだろうなと思った。

 新聞に掲載されるこの手の広告が、以前より格段に増えているように思うのは気のせいだろうか。いや、そうではあるまい。ただそれは、企業が謝罪しなければならないような事例が増えてきた、ということでは必ずしもないだろう。どちらかというと、消費者が企業に向ける目が厳しくなってきて、なにかあればこうして(高い掲載料を払って)公告せざるをえない環境になってきているということなのだろう。

 こうした風潮に、僕はちょっと前からなんとなくある種の気味の悪さや居心地の悪さのようなものを感じている。消費者が自分の身を守ることはもちろん大事だし、故意にであったかどうかはともかく、企業というものが極力、そういう事故なり不手際なりが起こらないようにすべきだというのは論をまたない。ただ、こうした広告の影に、つい僕は見てしまうのだ。消費者としての自分の利害とはもはやほとんど無関係に、「糾弾すること」それ自体が自己目的化していて、なにかあるたびに、それ見たことかと鬼の首を取ったかのように突き上げを始める、ある種の人々の存在を……。

 いや、この話はややこしくなるのでこのへんでやめておこう。

 実業之日本社より、あるアンソロジーへの短編の寄稿依頼をいただいた。基本的に受ける方向で考えているが、本が出るのはだいぶ先になる予定なので、今ここに書いてもきっと誰も覚えていないだろう。新潮社から『冥王星パーティ』の出版契約書が届いた。印税率が上がった。嬉しい。 

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コメント

すんごく要約すると「日本人の中に、みのもんたっぽい性格の人が増えた」ってことなんでしょうね。もう一歩進めて考えると、小さな怒りのはけ口を無くして、怒り方をこじらせている人が増えている気もします。それゆえ問題の本質はどっちでもよくなるというか。まぁ私自身も怒ることが苦手な人間なので「ダークサイド一歩手前」な状態なのかも知れません。余談ですが、普段怒られ慣れてない渋谷のギャル男くん。自警団のオッサンに怒られている時に「気持ちわりーよ、てめぇ」を連発してました。語彙の貧弱さ云々以前に、彼にとって「怒る大人」が文字通り「気持ち悪い」存在だったのかも知れません。この辺りの諸現象、たぶん根っこは同じだなぁ。

投稿: もり | 2007年3月14日 (水) 21時28分

いやー、久々に、なんとなく反応しにくいネタを振ってしまったかなと少々気に病んでいたのですが、さすがもりさん、痒いところに手が届くコメントを(笑)。
プチみのもんた症候群ですね。「ほっとけねぇっ!」……ほっとけよという。いや、境界線の引き方が難しいんですけどね、こういうのって。たとえば、観てないからわかりませんが、そのギャル男くんの事例にしても、僕はたぶん、自警団のおっさんの気持ちもわかるし、それを「気持ちわりー」と感じるギャル男くんの気持ちも同時にわかってしまうのですよ、たぶん。でもその嫌悪感の根源が何であるのか、明瞭に言語化することができないという歯がゆさ・もどかしさ。
まあそれはそれとして、みのさんは偉大だなとは思いますがね。それはまた別の問題であって。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年3月14日 (水) 23時14分

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