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2007年4月18日 (水)

雨の神田

 JR神田駅で降りて、早川書房へ。一昨年の暮、デビュー前に書いたあるファンタジー長篇を「SFマガジン」のS編集長に読んでいただいて以来、1年と4ヶ月ぶりだ。その長篇については、ここをこうすれば出版できると思う、と具体的な指示までいただいていたのに、その後、あまりに忙しくて、事実上放置状態になってしまっていた。

 なにしろ、それはほとんど書き直しに近い大がかりな直しになることが予想されたからだ。気持ちはあったのだが、そのための時間をどうにも工面できなかった。僕の方はそういう認識でいたのだが、S編集長はS編集長で、その後あまりに忙しく、自分が話を停滞させてしまったのだと思っておられたようだ。いや、これはやはり、どっちかというと僕の責任だろう。

 今回は基本的に、その仕切り直しという位置づけの打ち合わせだったのだが、長篇の手直しにすぐには取りかかれそうにないという状況は変わっていないので、その前にひとまず、短編の作品集を出すことを想定しつつ、不定期に「SFマガジン」誌上に短編を発表していくのはどうかということになる。

 しょっぱなは今のところ、7月発売号になりそうな気配だ。短編集は、既に発表している2編(『野天の人』『全世界のデボラ』)がそうであるように、SFというよりは「スリップストリーム」系が中心になりそうだが、なにぶん、まだ先の話なので、今の段階で確定的なことはあまり言えない。

 S編集長は、活字の形で読めるものはほとんどゲラのみという超多忙な生活の中、『冥王星パーティ』も読んでくださっていたので、たいへん恐縮する。とてもよかったと言ってくださった。ただ、男性が読むと、身につまされすぎてつらいかもしれないとも言う。しかし、それを言うなら女性も女性で身につまされる人が多いようなので、これは基本的に「つらい」本だということなのかもしれない。その「つらさ」をいいと思うかどうかは、年齢や性格によるのかもしれない。

 JR神田駅は、今日も雨だった。前に行ったときも雨だった気がする。

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コメント

楽しみですね!
今、長編をきちんと読みきれないような感じなので、短篇の方が嬉しいかもです。

投稿: ダレカ | 2007年4月19日 (木) 00時16分

そうですか。そうすると、たぶん、7月・8月と短編が続けて発表されることになるかと。IKKIでの連載も1話完結的なエピソードが多くなると思いますので、よろしくお願いします。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年4月19日 (木) 01時03分

平山さんの文章は皆さんも書かれているようにとても読みやすいし「冥王星」を読んでいて思ったのは、主要人物の描写がとても丁寧に描かれていて頭の中で具体的にイメージ出来てしまうという、文章なんだけれど漫画を読んでいるみたいに絵が浮かんでくるという面白さがあるのではないかと私は思っています。
感情に訴えるのが上手というか何がいいたいのか良く分かる表現力があると思っています
だから余計につらいと思うのかもしれません
平山さんはこれからどんな本を書いていくのか凄く興味がもてる作家さんだし、平山さん自身も面白い方なので(ブログを拝見していて)これからも楽しみにしているし、応援しているのでガンバ!です(笑)。

投稿: まり | 2007年4月19日 (木) 02時08分

おはようございます。(^-^)
平山さんって、毎日、すごくハードな生活を
しているんだろうなぁ・・・と想像して
自分もがんばらねば・・・と気合をいれているところです。
『冥王星』たしかに、男の人は辛くなるものかもですが
わたしは、どうしても『衛』さんに自分をあてはめちゃいます。
なんだか似ているかんじがします。そして、自分が言葉にできずにかんじていた
気持ちを平山さんの文章の中にみつけて、ハッとしたりして。。。

短編小説もすごく楽しみです。きっと、平山さんのファンがどんどん増えていきますね!

『冥王星』の中で「デリカテッセン」って出てきて、なんのことだろう・・・と思って調べてしまった、知識のない私ですが(汗)応援してますー!

投稿: 果歩 | 2007年4月19日 (木) 06時28分

おお! 短編集、非常に楽しみであります。塩澤さんということは、JA或いはJコレでの刊行ということになるのでしょうか? 愚考するに、ハヤカワ系読者と平山さんの(特にスリップストリーム系の)作品は相性がいいように思うので、書店員としても楽しみであります。無論読者としても、塩澤さんとの強力タッグに今から心の準備をしている次第であります。
時に、『冥王星パーティ』に先んじて、「桃の向こう」拝読しました。
ここであまり筋について書くとネタバレになるので、他の部分について短く纏めますが、対象を明確に言語化/論理的に解析しようと試みる点で、三人称の背後にいる平山さんと主人公の来栖が過去像と未来像のようにずれたり重なったりし、重層的な語りのようで面白かったです。

投稿: 狷介 | 2007年4月19日 (木) 14時20分

> まりさん
ありがとうございます。中学のとき美術部だったことが多少は関係しているのか、書いているときは情景が隅々までおそろしく明瞭に目に浮かんでいます。ともすればそれを全部文字で描写してしまおうとするのを、最近、やっと制御できるようになってきました(笑)。しかし、言いたいことが伝わった結果「つらい」というのは、物書きとしてはたいへん嬉しいことです。本は着々と出していくつもりですので、今後もよろしくお願いいたします。

> 果歩さん
今朝は比較的ゆっくりですね(笑)。
いや〜、女性で衛に感情移入されるというケースについては初めて聞きました。いろいろな楽しみ方があるのですねぇ(と自分の小説なのにまるで人ごとのように)。
「デリカテッセン」はですね、「惣菜」でもよかったんですけど、「惣菜」って書くとなんかこう、きんぴらごぼうとかカボチャの煮つけとかアジの南蛮漬けみたいじゃないですか(笑)。語の選択はいつもいろいろ悩みます。
ともあれ、これからも頑張ります!

> 狷介さん
JAあるいはJコレの方向で当初は考えていたんですが、どうもそうではないものになりそうな気配で……。しかしこれまだぜんぜん確定的情報ではないので、ただ心の片隅にでも小さくメモして、いつの日にか僕のことを思い出すがいい、って感じであります。
ところで、『桃の向こう』、読んでくださってありがとうございます。そして、短い中で非常ーに鋭く本質を突いた寸評、恐れ入りました。グウの音も出ません(笑)。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年4月19日 (木) 19時56分

平山さん、美術もやっておられたんですか!
凄いですね~多才というか根っからの芸術家なんですね(表現する事が好きなんですね)フ~(溜息)私がオトコだったら嫉妬してしまいそう~絶対に誉めない(冗談です・笑)
小説の中でクラシックギターのところは平山さん自身バンド活動?をされていたみたいなのでそういう経験とかいかして書かれているのかな?と思っていたのですが、絵画のところは書く時にいろいろと勉強されたんだなと感心しながら読んでいたのですが、本当に描いてらしたんですね!絵のところ読んでいて凄く良かったですよ(印象に残りました)。
となると(というより読んでいて感じたのですが)・・・この小説はある意味平山さんの自叙伝的要素が散りばめられた(上手く表現できませんが)小説ともいえるのでしょうか?!
衛の「首相になりたい」は「小説家になりたい」に聞こえてくるようなこないような・・(笑)

投稿: まり | 2007年4月20日 (金) 02時08分

『シュガーな俺』みたいにハナから「オートフィクションです」と銘打っているような作品とは違って、こういう作品の場合、どこからどこまでが「自叙伝的要素」なのかということを著者自らが明かしてしまうと興ざめだと思いますので具体的には言わないでおきますが、結局、登場人物は多かれ少なかれ僕自身なわけですよ。そういう風にしか書けないと思います、少なくとも僕は(つまり、1人2役どころか5役くらい?)。
ただ、中学のとき「美術部だった」というだけで(しかも部長)、正直、ろくに活動はしてませんでした。それでも、「将来は画家になろう」とかある時期まで本気で考えてたんですよね。正気かと。今から思うと、衛が首相になるよりもっとありそうにないことに思えるんですけど……(笑)。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年4月20日 (金) 22時41分

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