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2007年4月16日 (月)

駆逐される僕

 お昼どき、いつ行ってもたいていはすいているそば屋がある。ほぼカウンターオンリーだが、いわゆる立ち食いそば屋よりは小綺麗な見かけだし、すいていると言っても別にまずいわけではない。特別うまいというわけでもないが、まあこの値段ならこんなものだろうという程度だ。

 その店でとっとと食事を済ませ、少し先まで歩いて、やはりいつもほぼすいているカフェでゆっくりコーヒーを飲みながら読書をするのが、週に1回くらいはたどるコースのひとつになっていた。ちなみにそのカフェがほとんどいつもすいているのは、喫煙席がないからだと思う。僕は喫煙者であり、店内禁煙というのは望ましくないのだが、必ず席を確保できるという利点と比べると、煙草は必ずしも吸えなくてもかまわないと思う。

 レジに並びながら、僕の前にいるこの2組があの席とあの席を取ってしまったら満席になってしまうのではないか。コーヒーを受け取ったはいいが、座る席がなくて店内をさまようことになるのではないか。と気を揉むような状況(昼食後くらいの時間帯のカフェというのはたいていそんな状況なのだが)だと、めげそうになる。そんな心配を絶対にしなくていいという点が好ましくて、僕はそのカフェをよく利用するわけだ。そしてそこでゆっくりコーヒーを飲むためには、食事は早めに済ませたいところであり、そのためにはそのそば屋が必要ということなのだ。

 眠いせいか、なんだか回りくどい書き方をしてしまっているが、とにかくそんなわけで、僕はそのそば屋をある意味で愛用していた。ところが最近、そこに行くと、たいていは満席かそれに近い状況である。「それに近い」というのは、カウンターのひとつやふたつは空いているのだが、先に陣取った客が自分のバッグを隣の席に置いてしまっていたりして、結果として埋まっている状態、ということだ。

「すみません」と言えば空けてもらえるだろうし、空けるべきだと思うのだが(というか、店内がガラガラならまだしも、ある程度混んできたのならその時点で自発的にバッグを膝の上などに退避させるべきだと思うのだが)、それをするのが僕はイヤなのだ。そんなことをせざるをえない、しないわけにはいかない、せずにはいられない状況がイヤなのだ。

 そして僕は思う。なんでこんなに混んでいるのか、と。ついこの前来たときにはガラガラだったのに、と。そして僕は気づく。学校が始まったのだ。彼らはたぶん、ほとんどが学生なのだ。そしてこの店は、安いのだ。忘れていたが、非常に安い店なのだ。

 僕は安いという理由でその店を愛用していたわけではない。ただ単に、後に立ち寄るカフェでの時間をなるべく多く確保できるために手早く食事を済ませたいとの目的を持っているという条件下で、いつ来てもよけいなストレスを感じずに席を確保できる点がいいと思って、そこを選んでいただけなのだ。しかし本来、安い店に学生などが殺到するのは自然のことわりなのだ。それが資本主義の仕組みなのだ。僕は駆逐されるしかないのだ。尻尾を巻いて逃げるしかないのだ。

 そして僕は逃げる。ああ、逃げる逃げる。

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コメント

おはようございます!
ああ、なんかわかるなぁ・・・と思って
読んでいました。
わたしは、前に、おいしいかつ屋さんで
バイトしていたんですが、
そこは、お昼時になると、やはりランチをねらって
サラリーマンの人たちが殺到してました。
カウンター12席とテーブル4つの小さな店だったんですが
カウンターのお客さんの配分が難しいというか。。。
一緒に働いていた、おばさんは、上手に座っているお客さんを
つめさせたり、テーブル席のひとり客をカウンターに
うつってもらったりとやりくりしていました。
わたしは、いったん座ったお客さんになかなか移動をいいだせずにいたので、おばさんが
かっこいいなぁと思っていたのを思いだしました。
関係なくて、すみません。(汗
平山さんのくつろげる領域が平和なまま、ちゃんと平山さんの居場所を確保してくれていることを願ってます。
今日から私は、職場が移動になるので、なんだか気持ちが落ち着かず早起きです。
ああ、いつになったら、人見知りってなおるんでしょう。。。(汗
すみません、長くなってしまいました。では、よい一日を!

投稿: 果歩 | 2007年4月17日 (火) 05時22分

ああ、そうですよねー。自分が正しくて、相手が悪いことをしているのに、それを指摘するのはできれば避けて通りたいですよね。(先日のクリーニング屋の話にも通じますね。”よけいなストレス”)
私は、苦情を言うときでも相手が嫌な思いをせずに素直に従うような言い方をしようと心がけますが、うまくできないこともあって、そうするとかなり落ち込むのです。自然にそういうことができる人がうらやましいです。

それから、自分のニーズにあった食事処もこれだけレストランがある中でも探すのが難しいですね。私も一人ランチの店が潰れてしまったので、今はファミレス・カウンター席頼みです。
平山さんが次に安心してそのお店にいけるのは、学生たちがテスト期間に入った頃でしょうか。

投稿: | 2007年4月17日 (火) 13時25分

> 果歩さん
異動されたんですね。でも、そうでなくても果歩さんはいつも超早起きじゃないですか!(笑)
そうですよね、お店で采配を振るう側にもそういう心労はあるわけですよね。状況的に自分が座ってもいい席を取ることができない僕は、きっと逆にお客さんに席を提供しなければいけない立場になったときにも、「ここを整理すればあのお客さんに座ってもらうことができる」とわかっていても、それを実行できないのではないかと思います。

> 香さん
僕も昔よりは、正当なことであれば実際にそれを、なるべくカドが立たないような形で口にすることができるようになってきましたが、口にするまでためらいがあるだけに、そうしてためらっている間に心の中で蓄積していた怒りがつい口調に出てしまって、思っていたほど穏やかな調子で言えなくて、そのことにヘコんでしまったりします(仮に目的の方は果たせたとしても)。最終的には、自分が受けたストレスの総量の問題だと思うので、そのへんはいつも悩みどころですね。
ファミレスは、ひとりごはんの際は重宝しますね。でも、職場の近くのファミレスはいつも混んでいるのです。なぜなら、ファミレスだけど安い店だから(笑)。


投稿: 平山瑞穂 | 2007年4月18日 (水) 02時48分

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