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2007年5月26日 (土)

知らないことは

 煙草を買ってくるけどついでになにか欲しいものはあるかと妻に訊いたら、「水」と答える。近所のスーパーで、専用の2ℓ入り容器に無料でミネラルウォーターをもらえるのだ。しかしその作業は僕にとってものすごく憂鬱なものなので、いかにも憂鬱そうな顔で黙り込んでいたら、「あ、いやならいいよ」と笑って許してくれた。

 何が憂鬱なのかというと、そのスーパーはマンションの前の国道の向かい側にあり、そこの信号の切り替わりがものすごく遅いので、行って帰ってくるのがなんだかものすごく面倒くさいのだ。もうひとつは、日ごろ水をもらってくるのはほぼ妻の役目で、僕自身はめったにその機械を使わないので、使い方が頭に入っておらず、たまの機会があるたびに、書いてある操作方法を見ながらおぼつかない手つきでもたもたとボトルをセットしたり洗浄したりすることになる。それがイヤなのだ。うしろに人が控えていたりすると、もっとイヤだ。

 しかし、妻になにかしら弁明をしなければと思って、「まず、道を渡らなくちゃいけないのがイヤだ」と理由を説明しはじめたら、「こっち側にあるじゃない」と言う。実はそのスーパーは、国道のこっち側と向こう側の両方にある。向こう側の店舗が後からできたのだ。水を無料でくれるサービスは、当初、そっちの新しい方の店にしかなかった。それがいつのまにか、こっち側の古い方の店でも始まっていたらしい。「え、いつからそのようなの?」と、動揺のあまりちょっとおかしな日本語で妻に訊ねると、

「いつからって、もうずいぶん前からだよ」
「どこにあるの?」
「ケーキ屋さん側の出口のあたり」
「ははー」
「もしかして、あの出口使わないの?」
「うん、その習慣がなかった。だから今までまったく気づいてなかった」

 道を渡らなくていいのなら、それだけでも負担感がだいぶ減ぜられる。それに、煙草はどっちみち、そのスーパーの中にある自販機で買うつもりだったから、結局、水ももらってくることにした。そんなかんたんなミッションも果たせないようだと、夫の名が廃るからだ。案の定、まずあるボタンを押さないと、注水口のあるスペースのドアが解錠されないことがわからず、機械の前でオタオタしてしまったりしたが、無事ミッションは達成。これからはもっと頻繁に自分でも利用して、操作に慣れようと思う。

 それにしても、「ケーキ屋さん側の出口」をそんなに長い間使っていなかったのは驚きだ。いや、たぶん、ときどきは使っていたはずだ。しかし僕は、そこに給水機があることに気づいていなかったのだ。なぜ気づいていなかったのかというと、その事実を知らなかったからだ。僕は、知らないことには気づくことができない人間なのだ。

 小学館「きらら」での、書店員さんたちとの対談記事の原稿をチェックする。本当は、ほかにもいろいろやらなければならないことがあるのだが、なんだか風邪っぽくてダルい。今日はもう少ししたら寝ることにしよう(努力目標)。

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コメント

おはようございまーす。(^-^)
お水が無料ってひかれます。。。
うちもたまに、湧き水のあるところに4リットルの
ペットボトルをもってお水を
もらいにいきますが、いつも10人くらい
人がならんでいるので、待ち時間がいやだって親がいってました。
ひとりで、灯油のタンクみたいなのに10個ととか
くんでいく人がいると、本当に時間がかかるみたいで・・・そしてそうゆう人が多いみたいで・・・。(汗
でも、お水を汲みに行くのに、言い訳っぽいことを奥様にいっている
平山さんの姿をみて、なんだほほえましいって
思っちゃいました。(^-^)

投稿: 果歩 | 2007年5月27日 (日) 04時38分

10人! それは僕には耐えられませんね、まずそれだけ待つのがいやだし、自分が汲んでいる間にもうしろに10人くらい控えているかと思うと……。贅沢は言っていられないなと反省しました。それにしても、灯油タンク10個分汲んでいく人って、いったい何に使ってんでしょうか。水道がなくて、生活用水の需要すべてをそれで満たしているとでも考えないと理解しにくいですよね。世の中にはいろいろな不思議が……。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年5月27日 (日) 19時16分

あ、そういうお水の(専用容器の)販売の仕事依頼があって、ネットで調べたことがあります(結局その仕事はなくなったのですが)。

何に使ってもいいようなことが書いてあって、「野菜の水洗いにも良い」というようなことまで書いてありました。実際に奏している方もいらっしゃるのかも。
灯油タンクの方は、バーベキューとかに持参されたりするのかも?不思議ですね~。

投稿: ダレカ | 2007年5月28日 (月) 01時26分

あ、追加です。

新しく出た『メッタ斬り!』では、中原昌也氏のトークショーでの発言が収録されていて、「水道を止められた」などとあったので、そういうこともあるのかも~^^

投稿: ダレカ | 2007年5月28日 (月) 01時28分

そういえば、そのスーパーで最初に購入する専門容器には、「麦飯石水 おいしい水工房」とか印刷されてるんですが、給水機から出てくる水が本当にそれとイコールなのかどうかは不明です……。

で、その中原昌也さんのトークショーですが、「なるほど!」と思いました。たしかに、それはありうるケースですよね。そんな目にはゆめゆめあいたくないですけど(笑)。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年5月28日 (月) 02時15分

おおう!
この世知辛い世の中に、水が無料とは!
日頃、ボトルで買っている人たちが知ったら、平山家御用達スーパーに押し寄せそうです。
私の住んでいるマンションには、地下水が出る水道があります。当然、ご自由に、なのです。(ただし、洗車は不可)
住人の大半が裕福な老後ライフ、らしいので汲みに来る人は少ないと思いきや、以外にといった感じ。かく言う私も利用させてもらっています。
水を買う感覚って、理解できないんですよね。美味しいのかよく分からないし。ボルビックはたまに飲みますけど。金出してまでって正直、思います。
だから、平山さんの所のスーパーみたいのが広まれば、いいのでしょうけれど。
しかし、平山さんの文章を見ていると、「初めてのおつかい」を思い出してしまいました。
ごめんなさい。失礼ですよね(笑)
小説家の平山さんにも、日常があるんだなぁと思うと、親近感が沸いてしまって。
ご無礼お許しください。
これからは、「水買ってきて」と言われても嫌な顔になりませんね(笑)
蛇足ですが、生協のチラシで(平山さんが依然お食べになったような)缶入りのソーセージを発見。
大豆蛋白と卵白原料の12本入り。チャレンジしてみます!


投稿: 榊 | 2007年5月29日 (火) 10時23分

すいませんっ!
うっかりケアレスミスです。
「水、買ってきて」じゃなくて「水、もらってきて」ですよね。
ああもう、自分の馬鹿さ加減が嫌になるっ。
謹んで訂正させていただきます。

投稿: 榊 | 2007年5月29日 (火) 11時27分

> 謹んで訂正させていただきます。

あっ、別に、順当に意味が取れましたので大丈夫ですよ、そんな恐縮なさらずとも(笑)。

水を「買う」ことには、僕も抵抗があります。海外ならいざ知らず、飲み水が豊富な国内でそうまでして、っていう思いですね、やはり。しかし、無料かどうかはともかくとして、そのスーパーでもらってくる水は、やはり、水道水よりはうまいのですよ、ただ単に飲み水として飲む際には。でも水道水が耐えられないほどまずいというわけではないので、僕はあまり積極的に水をもらいに行かないわけです(言い訳がましいですが・笑)。妻は信州の出身で、いまだに「東京の水道水はまずい」と言うのですが、僕には正直、妻が言うほどピンと来ないんですよね。
缶入りソーセージ、ぜひ感想をお聞かせください。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年5月29日 (火) 20時12分

外ではミネラルウォーターを買って飲んでますが、家では浄水器の水です。最近はスーパーで無料で水を提供しているところが多いですね。私は使い方を知らないのと並ぶのが面倒なのと後は重たいので一回も利用した事がないですが、多分浄水器の水よりもおいしいのでしょうね。
水道水飲めますか?マンションの水質か地区の水質がいいんですね。浄水器をとおさないと飲めたものじゃないというか、水道水は飲んではいけないものだと思ってました。
東京の水(平山さんの地域の水)はきれいなんですね。

投稿: まり | 2007年5月30日 (水) 03時36分

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