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2007年5月 3日 (木)

二つの世界の狭間で

 勤務先で、今年は男子4名・女子2名の新人を採用した。連休明けから各部署に配属になるのだが、昨日までは研修期間で、締めは僕の所属している部署での研修だった。最終日である昨日、終業のベルが鳴って間もないくらいのタイミングで、女の子2人が揃ってやってきて、サインをしてくださいと言う。手にはそれぞれ、僕の本を持っている。一方は『冥王星パーティ』、もう一方は『シュガーな俺』だった。

 僕が職業作家であることは勤務先でもオープンにしているので、彼女たちが知っていることは別に不思議でもなんでもない。しかし、社内でおおっぴらにサインをせがまれることというのはほとんどないし、するとしても、もうなじみのある親しい相手だったりするので、ちょっと意味合いが違う。今回のようなケースは初めてであり、なんだか異様に照れ臭くて、仏頂面で超無愛想な対応をしてしまい、後から悪かったなと思った。

「やあ、君たち、さっそく僕の本を読んでくれたんだね。ありがとう。これからは、仕事上でも、また作家としてもよろしく頼むよ! アハハハハハハ……」

 などとサワヤカに返せればよかったのだが(どういうキャラ?)。

 サインをすること自体はもういいかげん慣れているので、どこかよその場所で言われたのなら、照れ臭く思うこともなかっただろうと思う。場所が社内になっただけでどうしてこんなに照れ臭いのか、と考えていて、自分が自分で思っていた以上に、会社にいる間は「一会社員」でいるらしいことに気づいた。そしてまわりにいる人たちは、おおむねその「一会社員」としての僕の顔しか知らない人たちだ。その中で、とっさにモードの切り替えができないということなのだ。

 そういえば、年明けに、ある取引先の人から会社宛てに年賀状をもらったときも、「最近は平山様のブログを拝見するのが日課になっております」とさりげなく書き添えられていて、それまでそんな話はいっさいしたことがなかったので、一瞬、ビビりまくったというひと幕があった。

 その人が言うには、「なにかの雑誌の記事で偶然知っていたのだけれど、これまで話題に出しそびれていた」とのことなのだが、もちろん、それは十分にありえる話なのである。にもかかわらずビビったのは、会社の仕事という文脈でのみ接点を持っている人が、作家としての僕のブログを読んでいるという事実がなんだか照れ臭かったからなのだ。「ゲ、あれを読まれてるわけ?」と思ったのだ。別に、読まれて困るようなことは何も書いていないはずなのだけれど。

 しかし、作家で兼業、というのはまったく珍しいことではなく、同業の人で日中はどこかに勤めているというケースは、ざらにあるはずだ。彼ら・彼女たちもやはり、似たような局面に立たされることはあるのだろう。もっとも、本名で活動している僕のようなケースは、ちょっと珍しいのかもしれないが。

 さて、4連休の初日だが、狙いすましたかのように、7月に小学館から出る予定の『株式会社ハピネス計画』(仮)のゲラが宅配便で届く。いや、ちょっと前に、「3日にお届けしてもよろしいでしょうか……」という打診はあったので、知ってはいたのだ、今日届くということは。それでもやはり、いざ届いてしまうと、なんだかちょっとゲンナリする。

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コメント

平山さん、ただいまです!30日に帰ってきたのですが、1日・2日は仕事だったので、今日初めて落ち着いてパソコンに向かってます。
過去ログはザーッと目を通しましたが、コメントはいつものように後日入れますね。

本名でデビューされているのって大変ですよね。『シュガ俺』の時も病院の人にばれちゃったわけですし。
ましてや、サラリーマンでもあるわけですから、親しい人だけではなくちょっと見知った人にも自分が知らないところで知られているという・・・。
ブログや小説では、普段人に見せる顔とは違う一面をさらすことになるのですが、どんな気分なのでしょうか?!

それでは、連休中も息が抜けない平山さんに、がんばれ~!!とエールを送ります。

投稿: | 2007年5月 4日 (金) 00時19分

おー、香さん、お帰りなさい。楽しんできましたか?
そうそう、知らない人に一方的に知られているのは別に当然というか、いっそもうどうしようもないレベルの話なわけですが、「ちょっと見知った人にも自分が知らないところで知られている」という、まさにそれがこそばゆいのですよ。
たとえばそういう間柄の人がけっこうマメにこのブログをチェックしてくれているということを知ったときの気分というとですね、うーん、どう言うのがいちばん近いかな。「恋人とイチャイチャしているところを実は目撃されていたと後に知った」ときに感じる気恥ずかしさ、がそれに近いでしょうか(笑)。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年5月 4日 (金) 01時29分

おはようございまーす。(^-^)
平山さんの会社で一緒に働ける人が
うらやましいなぁと単純にそしてミーハーに
思ってしまいました。

わたしもブログをやっていて、そこでは
いろんな自分の本音とかいっちゃってますが
それを一緒にバイトの人が偶然見つけてて
『読んじゃったー。(笑)』といわれたときの
照れくさい気持ちに少し似ているような。。。

いやいや、平山さんの場合は、もっと違いますよね。(汗

お仕事と作家の仕事を一緒にしているって
本当にすごいなぁと思います。
人の二倍の人生を生きているような。。。
わたしもがんばってバイトしてこようと真剣に
思いました。では、よい一日を!

投稿:  果歩 | 2007年5月 4日 (金) 06時42分

何となくですが、平山さんの恥ずかしさ、分かるような気がします。会社にいる時は、あくまでも「会社員」ですもんね。とっさの切り替えというのは難しいんじゃ。きっと、私が同じ立場だったら、ビビリまくってしまうでしょう。
でも、同じ会社に愛読者がいるというのも、ちょっとしたスリル?

今更ですけど、平山さんは猫派でいらっしゃいますよね。私は節操なしで、両刀遣い(笑

友人と、いい映画を観てきましたよ。
『ボンボン』。アルゼンチン版の藁しべ長者といった内容でしょうか。
主人公のおじさんと、白くてでかい闘犬「ボンボン」が車に並んで乗っている光景は、ほのぼのとおかしい。
もし、ご興味があればDVD化チェックをどうぞ。

投稿: 榊 | 2007年5月 4日 (金) 21時45分

> 果歩さん
あ、でも基本的には同じだと思いますよ、その、職場の人に偶然ブログ見つけられちゃった感じと。要するに、人には最低2つ以上の顔がある、ということなんですよ。ただ、僕の場合は言い逃れのしようがない、という点が少々酷なのかもしれません。

> 榊さん
それは「スリル」というか、なんというか……。同じ会社だと、「とりあえず近場にプロの作家がいるならサインくらいもらっておこう」というのと、本当の「愛読者」と、区別がつけづらくて迷うってのがありますよ。
猫派、というのは、ペットとして飼う場合、の話ですよね? まあ基本的にはそうなんですけど、最近犬もかわいいなあと思うようになってきました。
「ボンボン」ですね、覚えておきます。そうそう、飼うのではなくて見る分には犬も大好きですよ。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年5月 4日 (金) 23時24分

平山さんが本名だと知った時はびっくり!した記憶があります。今はもう慣れてしまったので違和感は全然なくて(私が慣れてどうするっていう感じですが・笑)改めてこういうご苦労?みたいなものがいろいろとあるのだなと思いました。(有名税ですネ!)
私なんかは、職場の方はいいな~サインもらえてと単純に思いました(笑)。
本名にしたのには何か理由があるのでしょうか?!

後「オズマガジン」買えましたヨ!
お写真もよかったです。私がチェックした雑誌でカラーのお写真ははじめてのような・・やっぱりカラーの方がキレイでいいですネ!
「冥王星」を読んだ後でも、小説の事がよく分かってよかったです。やっぱり平山さん自身がお話されると分かりやすくていいですネ
それではお仕事頑張って下さい!

投稿: まり | 2007年5月 5日 (土) 16時31分

本名にしたのは、とっさにいい筆名を思いつけず、また仮に思いついたとしても、きっと後になって「なんでこんなダサい筆名にしちゃったんだろう……」と悔やむことになるような気がしたからです。あと、本名それ自体が僕の場合もともと筆名みたいだし(笑)。ただ、そのせいでいまだに根強く「女性作家」という誤解がまかり通ってしまってますけどね。
「オズマガジン」、わざわざ買ってくださってありがとうございます。そういえば「シュガー」のとき、カラーで写真が載ったのはたしか「dancyu」だけでしたね。
今日は仕事漬けでした……。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年5月 5日 (土) 20時12分

あ、ワンちゃんもお好きだったんですね。
そこで、ご存知かもしれませんが、可愛いウェルシュ・コーギーのしなもん君のブログをご紹介いたします(ちなみに、はてな社長宅で飼われているので「会長」とも呼ばれています)。いつも更新を楽しみにしている日記です。

「しなもん日記」
http://d.hatena.ne.jp/hatenacinnamon/

連休、最後の一日ですね。楽しんでくださいね♪

投稿: ダレカ | 2007年5月 6日 (日) 01時43分

この犬はまた、利口そうですねぇ。こういう種類の「利口そうな感じ」というのは、猫にはほとんど求められないものですね。いい・悪いの問題ではなく。
ちなみに最後の1日、なんだかとても半端な過ごし方をしてしまいました……。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年5月 6日 (日) 22時03分

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