« 週明けの不機嫌 | トップページ | 美しい鬼太郎 »

2007年5月15日 (火)

雑誌の匂い

 結局、昨夜のうちに某短編を書き終えてしまった。だから、今日も眠い。

 職場から帰ってきたら、明日発売予定の「小説すばる」の掲載誌が届いていた。p.229の「月刊バイト自慢」というコーナーに、僕がコラムを寄せている。パラパラとめくっていたら、わりと近いページに、日本ファンタジーノベル大賞の受賞者として1年先輩の渡辺球さんが短編を寄せていて、びっくりした。

 ところで、「小説すばる」のページをめくっている間、なんだか懐かしいような気持ちになって、この正体は何だろうと考えてみたところ、「匂い」であることに気づいた。紙の匂いとインクの匂いが混ざったものだ。子どもの頃、叔母の家のトイレで嗅いだ匂いだ。というのも、叔母の家のトイレにはいつも、文芸誌を中心とした雑誌がたくさん並んでいたからだ。

 子どもの僕が匂いを嗅いだのが、「小説すばる」であったのかどうかはわからない。この手の文芸誌はたいてい似たような匂いがするからだ。ただ、今、ためしに「野性時代」の匂いを嗅いでみたら、それとは違うことがわかった。ついでに「小説新潮」や「小説現代」はまた別の匂いがするのかどうか検証してみたかったが、新しい号が手持ちにないので確認できなかった(この匂いは、たぶん数ヶ月で消えてしまう)。

 ちなみに僕は、けっこう「本の匂いフェチ」だ。雑誌だけでなく、書籍であっても、読みはじめるときにまず匂いを嗅いでしまう。自分の好きなタイプの匂いだと、おおいに満足する。ただ、書籍の場合は、店頭に並んでから購入するまでに比較的長い時間が置かれていることが多いため、たいていは匂いが薄くなっている。その意味では、雑誌の方が「嗅ぎがい」があってよい。

「小説すばる」のような文芸誌ではなく、グラビアページの多い雑誌だと、また別の匂いになる。紙質が薄い週刊誌と、比較的上質な紙を使った月刊誌でも、また匂いが異なる。

 電車の中で、だれかがめくっている雑誌の匂いが漂ってきて、その匂いに反応して「羨ましい」と思い、思わず売店でなにか雑誌を買ってしまうことすらある。そうでなければ、「あ、今漂ってきたこの匂いは、僕が読んでいるこの雑誌から発しているものかな」と思い、ページに鼻を近づけて嗅いでみると違っていて、実は隣の人が読んでいる別の雑誌が発生源だったと気づき、妬ましくなったりする。

 国際線の飛行機に乗ったとき、シートに無料で配布されている海外の雑誌からしばしば嗅ぐことのできる、あのちょっと酸っぱい匂いも、僕は嫌いではない。なんだか"magazine!"という感じがしていいのだ。"Oh, now I'm reading a magazine! Wonderful!"って感じで(意味不明)。

 ああ、気づいたら「雑誌の匂い」論議になってしまっている。

|

« 週明けの不機嫌 | トップページ | 美しい鬼太郎 »

コメント

あー新鮮な雑誌の匂い、いいですねー。以前本屋で働いていた時は、毎朝あの匂いの充満する中で深呼吸したものです。糊綴じでぶ厚めのカラーの雑誌は、めくる時のペリペリって音や感触も相まって無性に嬉しい気持ちになります。そういえば新築の建物の匂いも、息を吐かずにずーっと吸い込み続けられたらいいのにと思うくらい好きです。

雑誌にしろ建物にしろ、森林浴などと違って人工的な、身体によいわけでは決してない筈の匂いなのに、気分的にはより癒される感じです。不思議です。

投稿: dahlia | 2007年5月16日 (水) 01時29分

ああ、あなたは僕の言いたいことをとても正確にわかってくれている!(笑)

いや、何を隠そう僕は、「新築臭マニア」でもあるのです。生乾きの白木の匂いというより、漆喰とかコンクリートとかの匂いにより弱いみたいです。あるいはホルムアルデヒド臭なのか……。今のマンションはもう6年近く住んでいて、当然、新築らしい匂いなんてもうとっくにしなくなってしまっているのですが、日ごろあまり物を出し入れしない作りつけの収納棚をたまに開けると、そこに奇跡的に保存されていたらしい新築時代の匂いが思いがけずふわっと漂ってきて、われ知らず陶然となったり……。
ほんと、人工的な匂いのはずなのに、なぜそれを快いと感じてしまうのでしょうね。どうしてそんな受容体が、人間に備わっているのでしょうか。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年5月16日 (水) 01時50分

おはようございまーす。
うーん、睡眠不足気味みたいですが
がんばって働く平山さんの姿を思いうかべ
わたしも今日一日がんばろうって気持ちになりました。
ありがとうございます。(^-^)
ところで、本の匂い・・・ありますねー。
わたしは、新しい本の匂いが好きかも。。。
匂いって、それを嗅いだ瞬間に過去にタイムスリップしちゃいますよね。
これは、どこかで嗅いだ匂いだけれど・・・
どこだっけ?って思い出せないと
悔しい気持ちになります。
今、バイト先が出来て一ヶ月もたっていない
コンビニなので、その新しい店の匂いに
ちょっと酔い気味だったりします。(汗

あと、昨日のコメントで、平山さんに一緒に怒ってもらえて
なんだか、怒りのほとんどがなくなりました。(^-^)
ありがとうございました!
それから、小説すばる、ゲットしてきますよー!

投稿: 果歩 | 2007年5月16日 (水) 05時05分

私の場合は、幼稚園の入り口を入ってすぐの匂いですね。

確かあれは小学校に上がって少しした頃に、自分が通っていた幼稚園を訪ねた午後、玄関を入った途端、
『あ!!この匂い知ってる!! 懐かしい!!』
と、それまでは思い出す事も無く、幼稚園に通っていた頃には存在さえ感じてもいなかった『ある匂い』を初めて認識した時の衝撃を今でも憶えています。
(どんな匂いだったのかは、どうやっても思い出せないんですけれどね・・・。)
その玄関の匂いを感じたのと同時に、沢山のこの幼稚園での出来事が突然にどっと押し寄せて来て、7歳児の私はどう対処していいのか分からずに困惑していました。『郷愁』みたいな感覚、『あぁ、ここは二度と戻れない場所なんだ』と、そこまで考えたかどうかは分からないのですが、『今では他世界となってしまった、かつての自分が属していた世界の匂い』を第三者として感じて、しかも押し寄せてくる想い出にどうしていいのか分からずに『うわぁ!!なんじゃこりゃ!!』と、初めての体験に動揺したその感覚を妙に強烈に憶えています。


『匂い』と『出来事』の記憶って、セットになって脳の引き出しにしまい込まれているのかもしれませんね。
そういえば、私の友人はろうそくを吹き消した後の匂いが大好きでした。『誕生日みたいで幸せなキブンになるでしょ?』って言ってました。
きっとその人には何年分もの幸せな誕生日の想い出があるんだろうなぁ。

たまには色んな引き出しを開けて、外に取り出して、むし干しして上げて、その時には様々な時代の想い出のさざ波に揺られて遊ぶ・・・。
今だったら、沢山の場所を後にして、沢山の『郷愁』を味わった今ならば、そんな事も出来る余裕が出来たのかな?
その匂いに、もしも運よく出逢えたならば、引き出し開けられるのかなぁ?

投稿: ねむりねこ | 2007年5月16日 (水) 05時48分

私は子供の頃実家の近くに図書館があって放課後よく通っていたので、図書館に入った瞬間に漂ってくるたくさんの本の匂いか建物の匂いか分からないけれど、足を踏み入れた瞬間に心が落ち着ついていた事を思い出しました(ここに私の居場所があるみたいな)。
大きい本屋さんとかでも、独特の本の匂いがしませんか?図書館の匂いを思い出して心がなんとなく落ち着くような気がします。

投稿: まり | 2007年5月16日 (水) 21時26分

続きです!
後は病院の匂い(入った瞬間に鼻にツーンとくるあの強烈な)。
実家が開業医だったのですが、父親が家庭人ではなかったので、院内にしか父親との接点がなくて、病院の匂いをかぐと父親を思い出すという、病院の匂い=父親の匂いみたいな
なんか凄く複雑な心境になります。

投稿: まり | 2007年5月16日 (水) 23時17分

> 果歩さん
本の匂いは、そうなんですよ、なぜか懐かしい気持ちになるんです。子ども時代に、本を買ってもらったりするとすごく嬉しくて、匂いを嗅いだりためつすがめつしたりしながらとても大事に何度もくりかえし読んだりしたその記憶が蘇るのかなーと個人的には思ったりもしますが、みんながみんなそういう経験をしているわけでもないでしょうし……。

> ねむりねこさん
プチット・マドレーヌを紅茶に浸して口に含むと幼い頃の思い出が……というプルーストの有名な一節がありますが、僕は味覚よりも嗅覚の方が、追憶あるいは眠っていた記憶の鮮やかな呼び覚ましには劇的な効果があるんじゃないかとかねがね思っています。
そのご友人の、ろうそくを吹き消した後の匂い、それはなんとなくわかります。僕もたぶん、幸せな子ども時代を過ごしたのでしょうね。僕の場合は誕生日というより、クリスマスの記憶により強く結びついているみたいですけど。

> まりさん
図書館の匂いはですね、汚い話で申し訳ないんですけど、僕はなぜか、便意を催すことがあるんですよ(笑)。でもその理由が、どれだけ考えてもわからないのです。わからないのですが、過去に何人か、同じことを言っていた人に巡り合っているので、たぶん、ある程度は普遍性を持った感覚なんじゃないかと思っています。
それにしても、「病院の匂い」とお父さんについての記憶が結びついているというのは、なんだかせつないですね。それに近いものがふるとすると……ウィスキーの匂いを嗅ぐと母親を思い出すことがありますね(ってどんな母親だよ!)

投稿: 平山瑞穂 | 2007年5月17日 (木) 01時15分

今更ですが『週明けの不機嫌』でのコメントに「かっこいいですよ」といってくださってありがとうございます。
思い出しても全然かっこよくなく、無様でしたが、平山さんにそういってもらえてとても慰められました・・・。

それから”においフェチ”、わかります。私は旅行中に友達に「もしかして香ってにおいフェチ?」と気がつかれてしまいましたが、なんでもにおいをかいでしまうのです。ただ残念ながら本や雑誌のにおいというのに五感をくすぐられたことがないので、平山さんと共有できなくて悲しいです。
本屋は便意を催すといいますが、それは多くの人がそう感じるようです。でも、新刊の本屋に限らず、図書館でも、はたまたレンタルビデオ屋でも同じ現象は起きますよね。そういうことを人から聞いたこともあるし、私もたまにそうなります。(女なのに、こんなことを発言するな!)
なんか、リラックスするみたいですね、脳みそが。

投稿: | 2007年5月18日 (金) 10時18分

香さんが特に反応するのってどういう種類の匂いなんでしょうか。僕はいちばん弱いのが「出版物」系、次点が建物の匂い、次が……「太陽の匂い」?(いえ、決しておもねっているわけでは……)

便意は本の匂いによって催されるのかと思っていましたが、「本屋」「図書館」「レンタルビデオショップ」と並べると、「本の匂い」は本質的な要素ではなく、むしろ「状況」の方にポイントがありそうですね。むしろその特定の「状況」をわかりやすく表徴するものとして「匂い」が作用しているような……。これは一考に値する問題と思われます。ちょっとまじめに考えてみます。たかが「便意」のことといえども(笑)。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年5月19日 (土) 00時46分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/181870/15084829

この記事へのトラックバック一覧です: 雑誌の匂い:

« 週明けの不機嫌 | トップページ | 美しい鬼太郎 »