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2007年6月 3日 (日)

Der Untergang(没落)

 昨日・今日ずっと唸っていたのだが、ようやく、「SFマガジン」向け短編のネタが定まり、起稿することができた。ここまで漕ぎ着ければ、あとは時間の問題だ。といっても、いろいろ同時進行なので、よっぽど上手に時間を配分しないとこなせないと思うのだが。

 しかしとりあえずひと山越えた気がするので、今日の夕食以降は少しだけのんびりすることにして、録画しておいた映画『ヒトラー ~最期の12日間~』を観た。ものすごく地味な、しかしその分とても丁寧に作り込んだ映画だった。敵に着々と包囲され、もうにっちもさっちもいかなくなっていく司令部の様子を見ていて、規模ははるかに小さいながら、15年前、新卒で入った会社の経営がごまかしようもなく傾いて、ダメになっていったそのさまを思い出していた。

 当時の僕は、自分が本気で作家を目指す決意をするかどうかの瀬戸際で、会社がどうなろうが正直知ったことではなかったのだが、日々、「もうダメでしょ、会社としてもたないでしょ」という空気が社内に蔓延し、各自がモチベーションをあからさまに下げていく過程を、当事者の1人としてまざまざと観察できたのは、今思えば貴重な体験だったと思う。

 ぶざまなまでにうろたえる者、あからさまに舌打ちする者、にわかに皮肉屋になる者、笑うしかないと思って笑い飛ばす者。それでも「組織」は存続し、みんなとリあえず、毎朝ちゃんと出社はしてくるわけだ。崩壊の危機に瀕した組織の成員が取る態度というものには、そう大きな違いがないような気がする。

 そして、四面楚歌と言っていいその絶望的な状況の中、それでもどうにかして経営を立て直そうと悲壮な努力を続けていた役員たちの苦労も、今となってはよくわかる。しかし、僕も含めて若手は、残酷なまでに冷淡だった。わけても冷淡だったのは、何を隠そう、この僕かもしれない。僕は、沈没間近の船からネズミが逃げ出すように、尻尾を巻いて早々にその会社から脱走したのだ。その後数ヶ月で、その会社が完全に消滅するまでの間に、辞めていく者が続々と現れたというが、先鞭をつけたのはたぶん僕だったと思う。

 もっとも、僕も勝算があってそこを辞めたわけではない。「とりあえず」放送作家になるなどという夢みたいなことを考えていたが、今となっては恥ずべき過去でしかない。現職の放送作家の人に口ききしてくれるかのような調子のいいことを言っておいて、実際には打ち合わせと録音の様子を見学させただけでお茶を濁した、N本放送に入った大学時代の同窓生に対しては、いまだに恨みを抱いているけれども。

 まあ、古い話だ。若いうちはいろいろある。それが国家レベルの話になってしまうと、「いろいろあるよね」のひとことでは済まされなくなるわけだが。

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コメント

 ご無沙汰して下ります。高校時代に同じクラスだったものです。平山氏が新卒で入った会社はそのようになっていたのですね。そういえば、その会社は当時流行りの言葉だった「マルチメディア」の会社だったように記憶して下りますが。高校時代、休み時間の平山氏を見ている限りでは、出版社あたりに入るではと思っていたので、入社した会社の名前を知り、意外に感じたものでした。確か「ハイパー~~」という名前ではなかったですか。
 昔から、何故、そのような会社に入社したのかずっと疑問に思っていたのですが。
 それでは、また。頑張ってください。

投稿: 名乗るほどの者ではありません | 2007年6月 4日 (月) 13時13分

ほぼ、社名丸出しになってますね(笑)。いえ、別に、ずっと前に旧ブログの方で明かしているのでかまわないんですけど。というか、ご存知だったわけですね。うーん、ますます、あなたの正体がわからなくなってまいりました……。
ああいう会社をあえて選んだのにはですね、語り出したらキリがない複雑なわけが……。ほんとに複雑なのでここでは割愛しますが、まあ、僕なりの、「外れることをほぼ見越した(というよりむしろそのせいで自分が背水の陣をしかざるをえなくなることをなかば期待した)大バクチ」だったとでも申せましょうか。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年6月 4日 (月) 21時04分

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