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2007年7月10日 (火)

たしかに凶器になるが

 8月2日出発のオランダ・ベルギー旅行の代金を今日、入金した。これで確定だ。ああ、ようやく海外旅行に行ける。

 ところで僕は、1型糖尿病になってインスリン注射器を常時携行するようになってからすでに2回、飛行機で海外に行っている。バリ島と韓国だ。機内でも食事は摂るため、当然、注射器も機内に持ち込むわけだが、「これ、事前申告しなくていいのかな」となんとなく気になっていた。しかし、へたに申告して、「使用するときだけアテンダントに声をかけて持ってきてもらい、済んだらまた預ける」みたいなことになったらめんどくさいな、という思いもあり、2回とも、特に何も言わずに搭乗した。

 荷物検査のときにはその都度緊張したが、いざとなれば、それが何であってなぜ必要なのかくらいは英語でも説明できると思って、ほうっておいた。不思議なことに、2度とも、しかも行き帰り、注射器に関してはまったくノーチェックで素通りできた。だから、特に「注射器状の物体」についてはチェック項目に入っていないのかな、と思っていた。

 しかし、インスリン注射器は、悪用する気がありさえすれば、はっきり言ってかなりの凶器になる。針が鋭いから、というのもあるが、それよりはむしろ、中身だ。1本の注射器には普通、3mlのインスリンが入っている。3mlというとごくわずかなようだが、僕が1回に使用する量はその20分の1以下の量である。それでも、打ったまま食事をしないでいれば、たちまち低血糖状態に襲われ、意識を失ってしまうほどの効果があるのだ。まして僕は、自力ではインスリンをほとんど分泌できない。その僕でさえ、そうなのだ。健常者にインスリンを打つなら、もっと少ない量でもっと劇的な効果が出るだろう。

 その場合の「致死量」がどれくらいなのか、正確な知識はないが、たとえば3mlをすべて一気に注入したら、血糖値はたちまちゼロに近づき、ブトウ糖を点滴でもしないかぎり、まず、命がもたないだろう。実際、僕が処方されているインスリン注射器には、劇薬を意味する「劇」の字が刻印されている。こんな恐ろしいものを、本当に無造作に機内に持ち込んでいていいのだろうか。

 と思っていたら、今回は旅行の申込書に持病の申告欄があって、糖尿の場合、特にインスリンを機内に持ち込む場合には、どうもそこに書かなくてはいけないらしい。で、それを書いて申し込んだら、「(糖尿病のお客様へ)お伺い書ご記入のお願い」というのが届いた。しかもなんだか、「英文カード(Diabetic Data Book)」だとかを用意していかなければならないようだし、航空会社にも規定の用紙を提出しなければならなくなる場合もあるようだ。ああ、めんどくさいことになってきた。悪用なんか絶対しないからカンベンしてほしい。

 そういえば、だいぶ前に人から聞いた話で、真偽のほどもさだかではないのだが、かのジミ・ヘンドリックスは糖尿病だったが、どこであれ注射器を使っているとまちがいなくドラッグだと誤解されるので、機内ではインスリンを打つことができなかったという。あの時代の注射器なら、現在のような「一見マーカー」みたいなペンシルタイプではなかっただろうから、誤解を解くのはよけいに困難だっただろう。それに彼の場合、インスリンと見せかけて実はドラッグを打っている、なんてこともおおいにありそうだし。

 ペンシルタイプでも、機内で使うときにはかなり神経を使う。本当はトイレに行って打ちたいのだが、飛行機のトイレというのはなぜか、使いたいときにいつも"OCCUPIED"になっているのだ!(だから、たいていは毛布の下で人に見られないようにコソコソ打つ。)

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コメント

クーニャンは奥様のご実家に預けられるのですか? あちらも楽しみでしょうね^^

投稿: ダレカ | 2007年7月11日 (水) 02時40分

おはようございまーす。(^-^)
うーん・・・こわい。。。
注射をしないと命にかかわるし
さらに、それの量によって命にかかわるし・・・
と思うと、本当になんだかこわいです。
「シュガーな俺」を読んで、はじめて糖尿病について
なんとなく理解できていたつもりでしたが
あらためて、日常生活の中での大変な作業が
毎日あるのだなぁって実感です。
機内での注射。。。たしかに、ジミヘンなら
あやしい。。。(笑
オランダ・ベルギー旅行で、平山さんが危険なめにあわないようにお祈りしてます。(汗

投稿: 果歩 | 2007年7月11日 (水) 04時26分

お金を払い込んで、旅行が決まったときのすっきり感って格別ですよね。それなりの大金を払って肩の荷が下りたのもあるし、もう(お金を払ったからには)行くしかないのだという肝の据わった感じ。

ブログを読んでて、病気に触れた記事を読むたびに「ああ、平山さんは糖尿病なんだ。大変なんだ。」と改めて思います。(先日のドキドキして目が覚めたときの記事とか)私には計り知れない苦労がありますね・・・。

今は、国際線は機内持ち込み荷物にはかなりうるさくなっているので大変ですね。前は何でもかんでも水分没収だったのが、今は多少ゆるくなって100ml以下の水分なら持込可、それでも特別な袋に入れなきゃならないじゃないですか。病気で薬が必要な人にとっては、大迷惑な規則ですよね。
ほんの一握りの悪人のために、たくさんの普通の人が迷惑をこうむるなんて・・・腑に落ちません。

ところで、休みの前は作家業の追い上げが大変ですね。お体に気をつけて、万全な体制で旅行に臨んでくださいね(まだ3週間も先だけど・・・) 私の妹は、いつもその前がハードスケジュール過ぎて、よく旅行先で風邪を引いてます。

投稿: | 2007年7月11日 (水) 20時05分

> ダレカさん
それが今回は、近場と言っていい僕の実家(川越)に預けることになったんですよ。実は両親が飼っていた猫も、無為の後を追うようにして死んでしまって……。まあ、両親とも無類の猫好きなので、喜んであずかってくれるでしょうけど。

> 果歩さん
なにごとも、その立場に実際になってみないとわからないという面がありますよね。僕自身、自分が常時インスリンを必要とする身になるまでは、たかが飛行機に乗るのにそんなに苦労している人々がいることなんてまったく想像できてませんでしたから。

> 香さん
えっ? 水分没収ってなんですか? それって「常識」レベルの話ですか? まったく知らなかったんですけど!(笑)
いや、どっちみち、いろいろうるさくなっている結果なんだろうなとは思ってますけどね。
笑えない話なんですけど、去年の秋に更新したICチップ入りパスポートの写真、なんとなくテロリストっぽく写ってるんですよ……。怪しまれないようにしなきゃ。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年7月12日 (木) 01時28分

あ、すみません。もしかしたらアメリカやイギリス線だけなのかもしれません。旅行会社の人に聞いてみてください。
なんでも液体爆弾を持ち込もうとしたテロリストが捕まってからというもの、一時はペットボトルなどの飲料はもちろん、目薬やら、リップや口紅(グロス)などの半液状製品まで全て没収されてたのですよ。
私は去年12月、成田空港で購入したばかりの”新品の”化粧品をシカゴで没収されて悔しい思いをしました。
それが今は、100ml以下のものが合計で1L以下なら、透明な(ジップロックみたいな)袋に入れて持ち込めるという風に変わったのです。

投稿: | 2007年7月12日 (木) 12時00分

ははー、やっぱりテロがらみでしたか。そういえば最近イギリスに行った人が、いる間にもテレビでテロの報道をしていたり、飛行機もテロの警戒で欠航が相継いだりで生きた心地がしなかったと言ってました。

それにしても、それって「没収」なんですか? 一時預かりとかじゃなくて? なんと横暴な!

投稿: 平山瑞穂 | 2007年7月12日 (木) 21時23分

そうなんです!没収なんですよ。
涙目で「これは、成田で買ったばかりなんです」といったけど、ダメでした。
パッケージが開いてなくて、売り物で新品だということは一目瞭然なのに!
噂ですが、後で空港職員が自宅に持って帰るのだと聞きました。

ともあれ、今は成田空港全体で、検査が前より厳しくなっているはずです。
オランダ・ベルギーはアメリカほどではないにしても、1年前に比べたら制限があるはず。 ただ、平山さんは旅行会社のツアーのようですから、もし必要であれば注意喚起書が日程表に添付されているはずです。

余談ですが、液体爆弾のほかに、口紅爆弾を持ったテロも未然に捕まったとかとか。

最後に、前回水分合計で1Lと書きましたが、たぶん500mlだったです・・・(またもや、不確定情報ですみません)

投稿: | 2007年7月13日 (金) 17時01分

まあ、悪事をたくらんで持ち込む側も手口が巧妙化しているのでしょうから、慎重の上に慎重を期してチェックするのはしかたがないのかもしれませんが、「没収」は納得できませんね。空港職員の役得ってやつですか。それこそ、立場を「悪用」しているんじゃないかという(笑)。
空港で検査が厳しくなっているというのはあちこちで耳にします。早めに行動しないと乗り遅れてしまいますよね。

投稿: 平山瑞穂 | 2007年7月14日 (土) 22時55分

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