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2009年5月 8日 (金)

全世界のデボラ

Kc380063

 僕の単行本としては9冊目、初の短編集でもある『全世界のデボラ』が、早川書房より刊行された。今年3月創刊で、奇数月に刊行していく予定の新しい叢書「想像力の文学」のラインナップのひとつとしてである。高松和樹氏の作品をフィーチャーした、この非常にソリッドかつ不穏な雰囲気の装丁、今までの僕の本にはない感じで、僕自身の好みにもたいへん合っている。

 2005年からつい最近まで、主として「SFマガジン」誌上で散発的に発表してきた作品がメインだが、単行本化に当たって書き下ろした作品(『駆除する人々』)も1篇収録されている。「SFマガジン」は、僕にとって牙城というか、一種の聖域めいた位置づけになっている。今回の本にも、言葉本来の意味での「SF」はたぶん1篇も含まれていないが、「幻想小説」という言い方をしていいのであれば、すべてがそうだと言えるだろう。

『ラス・マンチャス通信』を愛してくれる人たちの一部が、その後僕が発表した作品群に失望しつづけていることはわかっている。もちろん、それについては僕にも言い分がある。いろいろある。山ほど、腐るほどある。それだけで本1冊が書けるほどある。今ここでそれを逐一言葉にしていくことはやめておくが、ひとつだけ言えることがあるとしたら、それは、この『全世界のデボラ』が、「ラスマン」以降の8冊の中で、たぶんもっとも「ラスマン」に近い立ち位置から書かれたものであるということだ。

 この本を足場にして、僕はもう一度、自分の執筆歴を見つめ直し、そしてこれからの方向を見定めていくつもりだ。その結果選んだ方向が、正しいか間違っているかなんてわからない。しょせん、世の中のほとんどのことは深い闇の中なのだ。これまでも闇だったし、これからも闇だ。それくらいの覚悟はできている。

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