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2009年9月11日 (金)

順序と秩序

「タイタニック」は決して好きとは言えない映画だが、好きなシーンはいくつかある。ひとつは、いよいよ客船が沈むとあってみんながパニックを起こし、数が絶対的に足りない救命ボートに殺到しているとき、甲板の係員が愚直に"Keep order!"と命じつづけて群衆にキレられる場面。彼は別に意地悪をしているわけでもなんでもなく、ただ自分の職務に忠実なだけなのだが、いささか空気が読めないところがあり、「この期に及んで何が"order"だ!」とみんなをイラつかせてしまうのである。

 "order"には「秩序」という意味と同時に「順序」という意味があるが、あの場面を見ているとそのことが直感的に了解されるような気がする。「順序」を守らないと、「秩序」を守ることもできない。そしてものごとには、しかるべき順序というものがある。

 僕が腹立たしく思うのは、たとえば朝の混んだ電車が乗降客の多い駅に到着したときの、出入口付近の人の動きだ。電車がまだホームに滑り込んでもいないうちから、降りようとして、あるいは「私は次の駅で降ります」という意思表示をしようとして、うしろから人の背中を押す乗客。いくら押されたって、まだドアが開いていないんだから、こっちとしてはどうしようもない。

 いざ駅に着いてドアが開いた後も、ただやみくもに人の体を押して出ようとする人がいる。出入口付近の人々はみんな降りようとしていて、待っていれば確実に自分の番が来るし、降りようとしている人がいるかぎり電車だってドアを閉めて発車したりはしないのに、彼らはただ牧羊犬に追われた羊の群れのように愚直に前の人間の背中を押しつづけるのである。

 押してどうなるというのか。かえって、そのむやみに押す力がドア付近に無駄な圧力をかけ、スムーズな乗降を妨害する結果になっているかもしれないではないか。どうして彼らにはそんな簡単なことが理解できないのだろうか。そういうシチュエーションが訪れるたびに、僕は声を大にして叫びたくなる。あの、制帽をかぶってクソまじめな顔をした甲板の係員のように、"Keep order!"と。

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