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2009年9月19日 (土)

長過ぎるお試し

 常々、ふくらはぎや足裏の凝りに悩まされている妻への誕生日のプレゼントとして、フットマッサージ器を購入しようと思いつき、量販店の売り場に赴いた。まず目に入ったのは、8種類くらい並べてあるマッサージチェアの見本が、すべて人で埋まっている光景だった。

 中には、リモコンのスイッチをいろいろ切り替えて、機能を「試して」いる人もいる。それはいいだろう、そのための見本なのだから。しかしそれはどちらかというと少数派で、ほとんどの人はただ気持ちよさそうに目をつぶって、マッサージそのものを満喫しているようにしか見えない。長いこと見ていても、一向にほかの客に譲り渡そうとする気配がないからだ。

 フットマッサージ器のコーナーには細長いベンチが置いてあって、その角の部分を取り囲むように4種類ほどの見本が設置されていた。僕が試してみたいと思った機種そのものは使っている人がいなかったのだが、別の機種を試している女性が至近距離に座っているため、僕がそれを試そうとすると、どうしても臀部が彼女と接触してしまう。それは気まずいので、僕は彼女が「お試し」を終えて立ち去るのを待とうと思った。

 ところが、彼女は一向にそこを立ち去ろうとしなかった。マッサージチェアに座っている連中と同じだ。あきらかに、「機能を試して」いるのではなくて、「マッサージを楽しんで」いるのである。彼女が満足するのが1分後なのか20分後なのか、それは誰にもわからない。そして僕は、それを悠長に待っていられるほど暇な人間ではない。

 しかたなく僕は、実際に自分の体で確かめることなく、機能を説明している文章を読むだけで機種を選ばざるをえなかった。

 従業員に声をかけ、在庫を確認してもらい、支払いを済ませ、配送の手配をしてもらうまで、さらに15分くらいかかったと思うが、帰り際にちらっと目をやったところ、フットマッサージ器を使っている女性も含め、「お試し中」のメンツは、ほとんど入れ替わった形跡がなかった。

 最初はちょっとだけ「試す」つもりで使ってみたら、あまりの気持ちよさに図らずも長時間占拠することになってしまった、というのなら、まだ情状酌量の余地もあるだろう。しかし、そんな人だけですべてのマッサージチェアが埋まるとは思えない。こんなことは信じたくないが、中にはわざわざ「マッサージ器を使うために」ここに来ている人もいるのではないか。

 あつかましいにもほどがあると思う。いやそれ以前に、そうすることが、本当にその商品の購入を検討している人の邪魔になっているかもしれないというところに、なぜ気が回らないのだろうか。

 と文句ばかり書き連ねてきたが、いざそれを使った妻が「これは気持ちいい!」とほくほくしているので、まあいいかと思った。ただ、ふと気づいたら、飼い猫のクーが尻尾をアライグマみたいに太くして、遠くから様子を窺っていた。作動中のモーター音が意外と大きくて、動物が唸っている声のように聞こえるためだろうか。

 安心させてやろうと思い、マッサージ器から離れた場所に連れていって撫でてやっているうちに尻尾が通常の細さに戻ったのだが、すぐに僕の手を振り払って戻っていき、またアライグマみたいに尻尾を太くしながらマッサージ器を観察していた。怖いんだけど気になってしかたがないのだろう。早く慣れてくれればいいが。

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