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2009年10月18日 (日)

遠い夏の怖い思い出

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 曾祖父・平山蘆江(ろこう)の「幻」といわれた怪談集が、このたびウェッジ文庫から75年ぶりに復刊された。蘆江の没年は昭和28年、僕が生まれるより15年も前だから、当然、会ったことはないが、曾祖父が作家だったことが、僕が作家を目指したことと無関係であったとは決して言えないと思う。

 また、これに収録されている『火焔つつじ』という作品には、いろいろ思い出もある。成人する前に実際に読んだことのある唯一の蘆江作品だったのだ。

 子どもの頃、毎年夏になると、僕は姉と一緒に、当時神奈川県の浦賀にあった叔母(父の妹)の家に泊まりがけで遊びに行くのが定例化していたのだが、あるとき、僕たちは叔母の本棚の中に偶然、蘆江の作品を収録したアンソロジーを見つけ(作家の勝山海百合さんの示唆によれば、それは中島河太郎・紀田順一郎編『現代怪奇小説集』(立風書房)だったのではないかとのこと)、2人でそれを読んだのである。それがまさに、『火焔つつじ』だった。

 どちらかといえば、今の言葉で言う「サイコホラー」に近い、実際には何も起こっていないような話であるにもかかわらず、読み終えたときにはなんだか背筋がぞうっとして、その晩はなかなか寝つけなかったことをよく覚えている。

 その後、この短い作品は、和田誠さんによるオムニバス映画『怖がる人々』の中の1編として小林薫・黒木瞳の主演で映像化され、家族揃って観に行ったのも、今では遠い思い出になりつつある。なお、このウェッジ文庫版の表紙のイラストは、そんな因縁もあってか、和田さんの手になるものである。

 先だって同じウェッジ文庫から復刊された『東京おぼえ帳』も名著なのだが、当時の花柳界や芸能界のゴシップを満載したあの随筆集より、こちらの方が現代の一般読者に受け入れやすい内容であることは論をまたないだろう。この機会に、少しでも新しい「蘆江読者」が増えることを願ってやまない(←いかにもオフィシャルっぽいコメント)。
 

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