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2010年2月 4日 (木)

13 年間書きつづける前に

 ある読者の方から、日テレで放映中のドラマ「曲げられない女」で主演・菅野美穂が演じている役柄が、僕の小説『プロトコル』のヒロインである「有村ちさと」を思わせるというご指摘をいただいたので、ちょっと観てみた。たしかに似ている。四角四面なところ、融通がきかないところ、言葉の正確な運用にこだわるところ……。

 ところで、その菅野美穂演じる「荻原早紀」は、弁護士を目指して9年間司法試験を受けつづけ、落ちつづけている。今回たまたま観た回で、彼女の10年日記の中身が一瞬だけ映されるのだが、毎年毎年、どの日にも「1時半まで勉強」と書いてあり、それを見た谷原章介が、「こんな毎日を9年間も続けていたのか……」となかば呆れるシーンがある。

 これは有村ちさとではなくてむしろ僕だ、と思った。

 作家デビューするまでの約13年間は、「勉強」の部分を「執筆」に置き換えるだけで、早紀が辿ってきた9年間とほぼイコールになる(もちろん、早紀ほど禁欲的ではなく、合間合間に飲んだくれたりもしていたとはいえ)。書きつづけ、応募しつづけ、落選しつづけ、それでもあきらめきれずにコツコツと書きつづけた13年間。

 しかし僕はそのことを思うときいつも、島本和彦の「逆境ナイン」の中で、強豪日の出商業に112点先取されていながら単身で奇跡の逆転を果たし、増長している全力学園キャプテン・不屈闘志を、父親である不屈根性(55歳)がたしなめる次の台詞を思い出すのである。

「よくやったぞ闘志!! さすがはわしの息子だ!! だが!! 増長するほどのことではない!! 肝にめいじておけ!! だいたい百点とられてから百点とり返すなど一見すごいことのように思えるが------だったら一点もとられず一点とって勝ったほうが理想的じゃないのか!? どうだっ ちがうかっ」

 言い返す言葉を持たない闘志に向かって、根性はトドメを刺す。

「まずは百点もとられた自分を反省しろっ!!」

 まったくそのとおりである。僕はまず、たゆみなく書きつづけていながら13年間もデビューできなかった自分を反省すべきなのだ。そしてデビューしてもなお、超低空飛行を5年間も続けている自分を反省すべきなのだ。

 やはり「逆境ナイン」はすごい漫画である。絶対に無人島に持って行こう。

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