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2010年9月21日 (火)

吠えよオッサン

 以前、なぜ飲食店内や電車内で人が携帯でだれかと話しているのが不愉快な感じを他の人に与えるのか、その理由を論理的に解析しようと試みて今ひとつ成功しなかったということがあった。

 そのとき掲げた仮説は、デシベルがどうこうと言うより、話している本人が、「自分は今携帯でだれかと話してるんだ」ということをなんらかの意味で誇示する(たとえば、「俺はこうして仕事の指示を人に与えられるようなエラい立場にいるのだ」アピールなど)意図を持っているらしいときに、物腰や口調ににじみ出るその自意識が不愉快なのだ、というものだった(その証拠に、周囲を憚ってなるべく小声で話そうと試みている人には、あまり不快さを感じない)。

 しかし、それだけでは説明のつかないケースというものもあって、だったらその定義は十分なものではないということになる。今日またその「例外」的なケースに遭遇したので、後学のために(?)ここに書きとめておこうと思う。

 電車の中、というより、ホームに降りてからなのだが、どこかから「ワンッ、ワンワンッ」という犬の鳴き声のようなものが聞こえた。それは普通、駅のホームでは聞こえるはずのないものなので、僕の耳はそれを「異音」と認識し、いったいなんの音なのかと気になっていた。

 数秒後、階段へと向かう僕の正面から、携帯を耳に宛てがった、犬のような顔をしたオッサンが近づいてきた。「犬のような顔」というのは、言葉だけで表現するのは困難なのだが、頭頂部が禿げていて、頭の両サイドにだけ髪が伸びている様子が、黒い垂れ耳を持つ種類の犬に見えたということなのかもしれない。

 犬の鳴き声のようなものを出す犬みたいな顔のオッサン? そりゃあいくらなんでもできすぎだろう、きっとこれは、タイミングがたまたま絶妙だったことから来る錯覚なのだ、そうにちがいない。僕は自分にそう言い聞かせながら彼とすれ違ったのだが、その瞬間、彼が携帯に向かってかなり大きな声でこう言っているのが耳に入った。

「うんっ、うんうんっ」

 そうかこれか。これがちょっと離れたところからは「ワンッ、ワンワンッ」に聞こえたのだ。

 しかし「ワンワン」という犬の鳴き声は、「鳴き声」というよりどちらかというと「吠え声」に近い。つまりその犬みたいな顔をしたオッサンは、「吠える」ような調子で通話相手の人(人、なのだろうと思う。たぶん、犬ではないだろう)に向かって応じていたわけで、たぶん今回の僕は、その人間離れした発声の仕方に対して反応してしまったのだろうな、ということで納得がいった。

 まあ、携帯で話していて声が遠かったりすると、ときにはそうなってしまうものだということはわかる。でも僕の見立てだと、そのオッサンはきっと普段から吠えるようにしゃべる人なのだ。そのことと、顔が犬に似てしまっていることは、無関係ではないのではないかとすら思うのである。

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