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2011年4月17日 (日)

don't drink coffee, I take tea, my dear

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 イギリス旅行で1日だけオプショナルツアーに参加し、バスでウィンザー城とストーンヘンジとバースを巡った。参加者は総勢23名、全員が日本人で、ガイドさんも日本人だったのだが、もう何十年もこちらに住んでいるらしいこの人がたいへん特異なキャラの人で、道中まったく退屈しなかった。

 ひとつには、彼が語源などに詳しくて、地名の由来等についてたえまなく豆知識を授けてくれるのが個人的にツボだったからだ。ただ、それがあまりに早口でよどみないので、そういうことによっぽど興味のある人ででもなければ、ついていくのは難しかっただろう。たとえば、シャフツベリーという地名についてはこんな調子だ。「shaftというのは矢のことですarrowというのは後世に出てきた言葉で昔はshaftだったこのshaftをbury=埋葬した=廃棄した場所ということでShaftesbury」。

 もうひとつは、この人がイギリス的な皮肉屋というか、シニカルなユーモアのセンスをふんだんに持ち合わせていて、それをのべつまくなしにまき散らしているのがなんとも楽しかった。

 最初にそれに気づいたのは、一般道でも80キロくらい出すたいへん荒っぽい運転をする運転手さん(白人)について、こう言及しているときだっただろうか。「皆さん今日はラッキーですよ。運転手さんもたいへんやる気がありますしね。さっきから何度もスピード違反してますし」。この調子で、「オチのある話」を繰り広げるのだ。

 たとえば、紅茶の話をしてはこう言う。「こっちの水は硬水なんですね。そのせいで紅茶を淹れると真っ黒になる。日本で飲むときとは出方が違います。レモンティーにしてもレモンがどこにあるんだかわからない。コーヒーみたいに真っ黒になります。硬水だからおいしいんです。こっちで紅茶飲んであーおいしいなって思って紅茶の葉っぱ買って日本に持ち帰る人がいますが、ムダですよ、水が違いますから」。

 また、道中通りかかった、ニワトリを何羽も広い庭で放し飼いにしている家を指差してはこう言う。「ニワトリっていうのは鶏舎に閉じ込めて飼育してると短命なんですよ。せいぜい2、3ヶ月しかもたない。ところがそれを放し飼いにするとまた生命力が戻ってきて何年も生きるんです。こういう家なんかではそれをこうやって庭で自由にさせて死ぬまで飼うんです」とまるで「ちょっといい話」みたいに見せかけておいて、最後にポツリとひとこと、(表情も変えずに)「……死んだらダシを取るんです」。

 パターンが読めてきてからは、今度はどんなオチをカマしてくれるのだろうと楽しみにするようにさえなり、彼が次のネタを披露するたびに少なくとも僕と妻は大受けしていたのだが、見たところ、ほかに笑っている人はほとんどいなさそうだった。

 たぶん彼らは、笑っていいのかどうかがまずわからなかったのだろう。仮にもツアーのガイドさんがそんなブラックなネタを口にするなんて想定していなかったのかもしれない。どうやらユーモアらしいということがわかったとしても、単純に「笑えなかった」のだということもありうる。たしかに、少々人を選ぶギャグだったと思う。

 しかしそのガイドさんのすごいところは、そんな客の反応なんてまるで意に介さず、一方的に言いたいことを言いたいだけ言っていた点なのだ。ああいう超然とした態度、少しはあやかりたいものである。

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