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2011年11月21日 (月)

ある虫の知らせ

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 猫はなぜ、箱に入るのがこんなにも好きなのだろうか。これは靴の空き箱で、サイズ的にクーの方がわずかながら体積が大きく、側面がたわんでしまうのだが、それも意に介さず、しょっちゅう自分からここに入っては、何が嬉しいのかゴロゴロいっている。蓋をかぶせてやるともっと喜ぶ。そのまま立ち去って数分間別のことをしてから戻ってくると、まだ蓋を載せた箱の中でゴロゴロいいつづけていたりする。

 それはそうと、僕はそろそろ予告をしなければならない。いろいろな事情が重なって、ちょうど1年間のブランクが空いてしまったが、今年最初で最後の単行本が、今月28日に角川書店から刊行される。先月出る予定だったのが延期された、『3・15卒業闘争』である。

 これは、僕が作家専業になって最初に脱稿した書き下ろし作品でもある。最初のおよそ3分の1は兼業時代に書いたものだが、残り3分の2は、今年1月末に勤め先を辞めてから1ケ月ちょっとの間に、怒濤の勢いで書き進めている。そして、まもなく脱稿、というとき、僕はなぜか突然、「もしも今大きな地震が起きて、このパソコンがオシャカになってしまったらどうしよう」と心配しはじめた。

 普段の僕はけっこうズボラで、執筆中の原稿のバックアップを取ったりすることはまずない。ところが、このときだけは違った。どういうわけか不安でたまらず、脱稿間際の原稿をUSBメモリにコピーして、少しだけ安心した。2日後、原稿は無事、完成した。当然、バックアップの方も、データを更新しておいた。そして善は急げと、角川の担当者さんにとっととファイルを送信してしまった。そうすれば、最悪、仮にこっちのデータがバックアップもろともダメになってしまったとしても、送信先の角川にはコピーがひとつ残ることになるからだ。

 これだけ念を入れておけば大丈夫だろう、とようやく胸を撫で下ろしたのが、3月10日のことだった。

 翌日の午後2時46分ごろ、書斎の本棚のひとつが倒壊し、その上に載せてあった重たい段ボール箱が、開いたままのパソコンのキーボードを直撃した。結果としては、保存していたデータが破損するようなことにはならなかったが、「バックアップを取っておかなきゃ」と急き立てられたあの胸騒ぎは、まさに虫の知らせ以外のなにものでもなかったのだな、と今でも思う。

 そんなに前に原稿が完成していたのに、本になるまでどうしてこんなに時間がかかったのか。そこには例によって、「大人の事情」というやつがいろいろある。ありすぎて困るほどある。だからそれについてあえて詳しく触れることは控えておくが、目の前に立ちはだかるそうした数々の大人の事情をかいくぐり、この作品の刊行がこうして確定したことは、奇跡に近いことだと僕は思っている。

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