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2012年1月 7日 (土)

トリツク島もなし

 ああもううんざりだな。解かれるべき謎、解かれることを待っている謎を解いて楽しいですか? そんなものが真の謎と言えますか? 東京タワーは赤いのがご自慢ですか?(『ぷりぷり県』by 吉田戦車)

 いやそれはいいとして、昔夢中で観たドラマ「ケイゾク」を十数年ぶりに観たら、トリックにけっこう無理があることに気づいてしまった。いや、トリック自体に破綻はないんだけど、そんなこと本当に可能なのか、という。

 たとえば、「4階の一番奥の部屋」という情報だけが与えられている状況で、本当はひとつ手前の部屋を「一番奥」と錯覚させるために、「あらかじめニセの壁を用意しておいて、ここぞというときにその壁をひとつ手前の部屋まで移動させる」ことでその錯覚を生み出させるってね、言葉で言うのは簡単だけど、それを松田美由紀演じるあの平凡な主婦がいったいどうやって1人で成し遂げるのかな、という。

 それをするには、最低、次の条件が満たされていなければならない。(1)当該のマンションの壁の仕様(サイズ、壁の材質など)がわかっていて、それを適切に業者に指示できる、(2)業者がそのオーダーに適切に応えられる、(3)そのニセの壁を当該のマンションに搬入するに際して、誰にも(というのは、業者にもマンションの住民にも)怪しまれない理由をでっち上げられる、(4)そのニセの壁は、女手ひとつで自在にスピーディーに移動させることができる。

 いやー、そうとうハードル高いですね。というか、事実上、これは不可能と言っていいでしょう。「もし仮にそのとおりにできるとすれば」、あの松田美由紀演じる主婦の犯罪は完全に近いものになったでしょうが、現実問題、そんなことはまずできないですよね。

 いや、特に「ケイゾク」が悪いと言ってるわけじゃないんです。あれは当時も楽しく観たし、今も楽しく観ている。ドラマとしては非常におもしろくて、僕自身もけっこう影響を受けた。でもそれはトータルとして見た場合であって、個々のトリックについてはかなりの無理を感じるのです。そしてそれは、「ケイゾク」に限った話ではぜんぜんない。

 ああいった作品の中で扱われる「トリック」って、かなりの頻度で、僕には「理論上可能なトリック」にすぎないものに思えるんです。理論上可能だけど、実際問題、不可能かそれにかぎりなく近いトリック。そこで一気に醒めてしまうものが、少なくとも僕にはある。そうじゃない人もいるのかもしれないけど、僕にはムリです。それに気づいてしまってからもなお、そのエピソードに関心を持ちつづけることはできない。

 でも、いいんですかね、それで。それでもいいって人が大勢いるんでしょうか。だとしたら僕は、入口で大きく間違っているのです。しかし仮に僕が間違っていることを認めるとしても、自分が陥っているその「間違い」を正す気持ちにはどうしてもなれないのです。

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