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2012年11月26日 (月)

夢で出会うなんの変哲もない人々

 なるべくマメに夢日記をつけるようにしている。創作上の思わぬヒントになることもあるし、そうでなくても、一般的な描写力のトレーニングになるからだ。

 夢にはしばしば、現実には存在しえないものが、現実にはありえない配置で登場したりする。それを、仮に第三者が読んだとしても理解できるように客観的に描写するのはなかなか骨が折れるが、逆にいえば、それがクリアできるなら、どんな荒唐無稽な内容も文章で的確に描写することができるはずだと僕は考える。

 しかし、そうして夢で見たままのことを、正確を期して記録するように努めていると、実にしばしば、夢に「ある存在」が登場していることに気づく。その存在とは、「実在しないが、夢の中では知っているという設定になっている人物」である。

 それは職場の上司または同僚であったり、過去にどこかで会ったことがあるはずのだれかであったりする。目が覚めてから思い出すと見ず知らずのだれかなのだが、夢の中では、「自分はたしかにこの人を知っている。自分にとってこういう関係の人であったはずだ」と確信している。そういう人物が、ほぼ日替わりで無数に登場するのだ。

 彼らはいったい、誰なのだろうか。

 夢から覚めた直後には、その顔の造作もかなりはっきり記憶していて、もし道端で見かけたら「あの人です」と指差すことができるであろうほどである。彼らは実際に、現実世界のどこかに存在しているのではないか、と思う瞬間がある。その彼らが、なにかのかげんで僕の夢の中に紛れ込み、そこで僕と出会っているのではないかと。

 しかしまあ、彼らの多くは、仮に現実世界における所在が判明したとしても、特別に会いたいと思うような人々ではない。だからこの問題についても、これ以上深く考えるつもりはない。50がらみの、前髪をまん中で分けた、冴えない黒縁のメガネをかけた、ヒゲの濃い、まあまあ親切だが特別に話がおもしろいわけでもないという男のことなど、誰が深く追求しようと思うだろうか。

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