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2016年4月 6日 (水)

『ルドヴィカがいる』文庫版

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2013年に小学館より単行本が刊行された拙著『ルドヴィカがいる』が、このたび小学館文庫に入った。

本業だけでは食っていくのが難しい売れない小説家・伊豆浜亮平が、糊口をしのぐためのアルバイトとして行なっている女性週刊誌のライター仕事を通じて知り合った若き天才ピアニスト、「鍵盤王子」の異名を取る荻須晶と知りあい、不思議な言葉を操るその姉・水(みず)失踪の謎を探る過程で言葉の迷宮にからめ取られていってしまう、という物語である。

単行本のカバーは、不穏な暗い森のイメージが印象的なデザインだった。

Ludwika    

一転して今回は、画像的要素や色彩などを徹底的に削ぎ落としたソリッドでシンプルきわまりないデザインになっている。最初にラフを見せられたときは思わず目を瞠った。

元少年A氏の『絶歌』や、小保方晴子さんの『あの日』など、物議を醸した人の「手記」のカバーデザインにも相通じる大胆さだが、それ以外にも、タイトルの下に小さく入った仏語題がワンポイントになっている点、一見無地にも見える背景に実は薄いスミアミで「ルドヴィカがいる」の文字がランダムに配置されている点、タイトルよりもむしろオビのキャッチの方が大きい字で表示されている点など型破りな要素が満載だし、何より文庫でこうしたミニマムなデザインというのはかなり異例なケースなのではあるまいか。

こんな小さな画像や、ましてネット書店での書影などでは、この「異物感」を実感することは難しいと思う。ぜひ現物を手に取って見てほしい。

カバーがこのデザインに落ち着くまでにはそうとうな紆余曲折があったらしい。すべてが確定したあとで、担当編集者経由で今回発生したラフ案のほぼすべてを「参考までに」ということで見せてもらったのだが、その数の多さに度肝を抜かれた。

バラの花などボタニカルなイメージを前面に押し出した絢爛なものから、「森と女」がモチーフの写真を使用したもの、一見風変わりな少女のイラストを援用したもの、同じミニマム路線でも一面黒で塗りつぶされているもの、そしてそれぞれの路線の中で派生した無数のバリエーションなど、その数は優に100点を超えている。

それだけあると、もはや何をもって「よし」とするのかわからなくなりそうなものだが、できあがった現物を前にすると、「うん、たしかにこれがいちばんだな」と納得させられる。「シンプル・イズ・ベスト、ただし若干のヒネリが存在感を格段に高める」といったところだろう。デザインを担当してくださったbookwallさん、本当にありがとうございました。

なお本文庫には、文芸評論家の関口苑生さんがすばらしい解説を寄せてくださっている。このいくぶん人を食ったところのある作品についてのすぐれた解題になっていることは言うに及ばず、物書きとしての僕のスタンスについても、僕自身が言いたかったことをみごとに代弁してくださっていて、まさに感激の至りである。こちらにもこの場を借りてお礼を述べさせていただきたい。

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