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2017年3月17日 (金)

遅い目覚め

最近、深田晃司監督の映画作品をいくつかたてつづけに観た。すばらしい。「先が読めないおもしろさ」というのは、こういう作品群にこそ捧げられるべき言葉だと思う。はっきりした起承転結、わかりやすい文法に則ってウェルメイドに作られたどんなエンタメ作品よりも「先」が気になって、ひとたび観はじめるや途中でやめることができない。

それらを観ながら、自らの不明を恥じずにはいられない(村上春樹的に言うなら、「不明を恥じないわけにはいかない」。なんで村上春樹的に言いなおさなければならないのかは自分でもよくわからないが)。深く、深く不明を恥じる。僕はこの十数年、いったい何をしていたのだろうか。あくせくと目の前の仕事を片づけることに汲々としながら、いちばん大事ななにかを見失っていたのではないだろうか。

もう遅いかもしれない。今さらかもしれない。しかし僕は、とにかくもう一度、本来自分が目指していたところに目を据え、そこに向かって歩みを進めていこうと思う。僕のいわゆる(エンタメ作家としての)作家生命は、昨年の時点ですでに尽きたと思っている。どうせもう終わっているのなら、何をどう仕切りなおそうが勝手ではないのか。

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2017年3月10日 (金)

アンソロジー『変態』(シリーズ紙礫)

Pervert_2

僕が編者として取りまとめ、解説を寄せた短編小説アンソロジー『変態』が、皓星社の「シリーズ紙礫」の第7弾として発売された。ご覧のとおり、なんとも怪しいたたずまいの本である(撮影しようとしたら猫のクーが寄ってきたので一度どかしたのだが、どかしてもまた寄ってきてしまうので、あきらめて一緒にフレームに収めた次第)。

収録作は以下のとおり。

「犬」 中勘助

「東京日記(その八)」 内田百

「富美子の足」 谷崎潤一郎

「彼等[THEY]」 稲垣足穂

「合掌」 川端康成

「果実」 平山瑞穂

「夢鬼」 蘭郁二郎

それぞれの作品については「解説」の中でほぼ語り尽くしているので、ここではくりかえさない。ただ、川端と蘭の間にさりげなく紛らせてある僕自身の書き下ろしについては、(当然のことながら)解説は省いているため、ここでひとこと補足しておこう。 

この作品「果実」は昨秋一気呵成に書き上げたものだが、中核となるモチーフは、実は二十数年前、アマチュア時代に書いた習作から切り取ってきてリミックスしたものである。まだ25歳かそこらの頃の話だ。25歳。信じられないくらい若い。そのときの着想が、長い歳月は経たものの今ではこうして活字になっていることを、当時の自分に知らせてやりたくてならない。 

なお、ついでなので一応言っておくと、クーは元気である。このブログに登場するのも軽く5、6年ぶりなのではないかと思うが、10歳の今もこれといった病気にはかからず毎日陽気かつ呑気に過ごしている。ただ、なぜか腹部を執拗に舐めつづけるせいで、ふさふさだった腹毛のほとんどが禿げてしまっているのだが(アレルギー性らしく、ときどき薬をやったりしているのだが、根本的な解決には至らずにいる)。

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